カンショβーアミラーゼの酵素製剤としての利用
- [要約]
- カンショ塊根より抽出・濃縮したβーアミラーゼは、大豆由来の酵素と同様にマルトース製造における酵素製剤としての利用や澱粉の老化防止剤として利用可能である。
- [キーワード]
- カンショ、βーアミラーゼ、酵素製剤、マルトース生産
- [担当]
- 九州沖縄農研・畑作研究部・畑作物変換利用研究室
[連絡先]0986-22-1506
[区分]九州沖縄農業・流通加工、畑作
[分類]技術・普及
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[背景・ねらい]
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カンショ塊根はβーアミラーゼを含有しているが低含有量や酵素の安定性等の問題からほとんど利用されていない。そこでカンショ塊根の新需要促進の一環として、澱粉の糖化や老化防止のための酵素製剤としてのβーアミラーゼの利用可能性を明らかにし、資源の有効利用に資する。
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[成果の内容・特徴]
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九系91193-2、九州140号、サニーレッドはシロユタカの約2倍以上のβーアミラーゼ活性を示し、酵素製剤製造用品種として有望である(図1)。九州140号の水抽出画分凍結乾燥品は市販の小麦フスマや大豆酵素製剤より高い酵素活性を示す(表1)。
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九州140号、サニーレッドは貯蔵(摂氏12〜15度)により、急速にαーアミラーゼ活性が上昇する(図2)。
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試作したカンショβーアミラーゼ製剤に耐熱性枝きり酵素を加えてマルトース生産を試みると、摂氏65度(反応時間48時間)および摂氏70度反応時間24時間)の反応でも80%以上の安定したマルトース生産が維持されている。耐熱性の低い大麦由来βーアミラーゼでは、摂氏65度(反応時間48時間)でマルトース生産量が約半分以下に低下する(図3)。
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[成果の活用面・留意点]
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澱粉製造で排出される残渣の有効利用として、βーアミラーゼ製剤は調製できる。
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カンショ塊根搾汁液中に混在するαーアミラーゼの除去が必要な場合は、低pHで加熱処理する連続失活処理法が確立されている(データ省略)。
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企業で製品化が進められている。
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[具体的データ]
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図1 高β-アミラーゼ品種(1996年)の検索

図2 貯蔵期間によるα-アミラーゼ活性の変化

図3 ハイマルトース製造におけるβ-アミラーゼ実用試験

表1 市販酵素製剤と九州140号のβ-アミラーゼ活性の比較
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[その他]
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研究課題名:甘しょβーアミラーゼの特性解明
予算区分 :新需要プロジェクト
研究期間 :1998〜2000年度
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