水稲「ヒヨクモチ」の餅生地硬化度に及ぼす栽培環境要因とその安定化策
- [要約]
- 水稲「ヒヨクモチ」の餅生地硬化度は、登熟気温が高いほど大きい。餅生地硬化度を1.9kgf未満にするためには、移植時期を6月20日以降とする。また、過度の実肥の窒素施用は餅生地硬化度が大きくなるため、佐賀県施肥基準に従って施肥管理を適切に行う。
- [キーワード]
- 水稲、ヒヨクモチ、餅生地硬化度、登熟気温、移植時期、窒素施用
- [担当]
- 佐賀農業セ・企画流通部・流通利用研究担当
[連絡先]電話0952-45-2141
[区分]九州沖縄農業・水田作、流通加工
[分類]技術・普及
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[背景・ねらい]
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実需者の糯米品質に関する最も多い要望は、原料品種の加工特性の年次間差が小さいことである。佐賀県の主力糯米品種「ヒヨクモチ」は、餅生地に加工した場合の固まりにくい特性が実需者から評価されているが、1998,1999年産は逆に「平年より固まりやすかった」との評価が数多く寄せられ、その特性の年次間差を小さくする対策が求められている。そこで、「ヒヨクモチ」の餅生地硬化度(餅生地を摂氏5度に24時間保持した後の貫入抵抗値、固まりやすさを評価)に及ぼす栽培環境要因とその安定化策を明らかにする。
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[成果の内容・特徴]
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「ヒヨクモチ」の餅生地硬化度は、登熟気温(出穂期から収穫前日までの平均気温)が高いほど大きい。実需者が「ヒヨクモチ」に求める餅生地硬化度は1.9kgf未満であることから、その生育条件は登熟気温が摂氏22度以下の場合と推定される(図1)。
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1998,1999年産「ヒヨクモチ」の登熟気温は摂氏24.0度,摂氏23.1度で、その前後8年間の平均値摂氏21.4度と比較するとかなり高く、このことが実需者評価を低下させた主な要因と推定される。
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「ヒヨクモチ」の登熟気温が摂氏22度以下となる年数比率は、移植時期を6月20日以降とすることで75%以上に高まる(表1)。
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「ヒヨクモチ」の餅生地硬化度は実肥の窒素施肥量が多いほど大きくなるため、過度な施肥とならないよう佐賀県施肥基準に従って施肥管理を適切に行う(表2)。
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[成果の活用面・留意点]
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佐賀県平坦部の稚苗移植栽培に適用する。
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佐賀県施肥基準では、「ヒヨクモチ」の実肥の窒素施用時期と量に関して、出穂後10〜15日前までに1.0〜1.5kg/10aを基本とし穂揃い具合や葉色等の生育診断でその量を調整することとしている。
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[具体的データ]
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図1 「ヒヨクモチ」の登熟気温と餅生地硬化度との関係

表1 「ヒヨクモチ」の移植時期を変えた場合の登熟気温が摂氏22度以下となる年数比率

表2 「ヒヨクモチ」の餅生地硬化度に及ぼす実肥の窒素施用量の影響
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[その他]
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研究課題名:モチの硬化度など新たな消費・実需ニーズに応えうる米麦大豆生産技術の開発
予算区分 :県単
研究期間 :2001〜2005年度
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