水稲中生品種の疎植条件に適した施肥法
- [要約]
- 疎植栽培において、移植後30日頃に中間追肥を0.4Nkg/a施用し晩期穂肥を省略することで、また慣行施肥より20%減肥して肥効調節型緩効性肥料を施用することで穂数、m2当り籾数が確保され慣行栽培と同程度以上の収量が得られる。
- [キーワード]
- 水稲、疎植、中生品種、低コスト
- [担当]
- 熊本県農業研究センター・農産園芸研究所・作物研究室
[連絡先]電話096-248-6444
[区分]九州沖縄農業・水田作
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
- 稲作経営において、水稲疎植栽培は単位面積当たりの育苗箱数を減らすことにより育苗管理・移植作業の省力化が可能な低コスト技術であり、熊本県においても導入されつつある。しかし、その作業面の有利性のみが強調されており、収量、品質は不安定な状況にある。そこで、疎植栽培に適した安定栽培につながる施肥について検討する。
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[成果の内容・特徴]
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- 中生品種を用いた9.5〜12.6株/m2の疎植栽培では、中間追肥を行わない場合には慣行栽培(18.5株/m2)に比べm2当り籾数、登熟歩合が劣り収量はやや減少する(図1)が、中間追肥を0.4Nkg/a施用し、晩期穂肥を省略することで、慣行栽培(18.5株/m2)と同程度以上の収量・品質を確保できる(表1)。
- 疎植栽培における肥効調節型緩効性肥料の施用は慣行窒素施用量の20%を減肥しても慣行栽培(18.5株/m2)以上の収量を確保できる(表1)。
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疎植栽培では慣行の栽植密度に比べ、10a当り育苗箱数を37〜64%減少させることができ、育苗資材コストを2200円程度、育苗箱運搬時間を35%程度軽減できる(表2、表3)。
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[成果の活用面・留意点]
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中間追肥0.4Nkg/a施用した区に晩期穂肥を施用すると、タンパク質含有率が慣行に比べ0.4ポイント程度高くなる(表1)。
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疎植栽培で植付本数を増やしても、籾数は増加せず、収量は同等かやや減収する。
- 疎植条件では、最高分げつ期が慣行栽培(18.5株/m2)に比べ同等かやや遅延するため、中干しは軽めにする。
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本試験は黒ボク土壌における試験である。
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[具体的データ]
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図1 m2当り籾数と登熟歩合の比較

表1 疎植栽培における生育・収量・品質調査

表2 栽植密度の違いによる育苗箱運搬作業時間の比較(10a当り)

表3 栽植密度の違いによる育苗コスト比較(10a当り)
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[その他]
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研究課題名:水稲の疎植栽培による省力安定栽培技術
予算区分 :県単
研究期間 :2002〜2004年度
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