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平成16年産水稲「ヒヨクモチ」の台風による褐変籾の発生程度と減収


[要約]
平成16年産「ヒヨクモチ」は台風の襲来が出穂と重なったため、褐変籾が約5割と多発し、登熟歩合の低下等により減収及び品質の低下を招いた。褐変籾の発生が多い穂ほど不稔の発生が高く、減収程度が大きい。

[キーワード]
ヒヨクモチ、台風被害、褐変籾、減収程度

[担当]
佐賀農試セ・栽培技術部・作物研究担当

[連絡先]電話0952-45-2141	
[区分]九州沖縄農業・水田作	
[分類]科学・参考	

[背景・ねらい]
平成16年度、水稲の生育中後期に本県に襲来した台風によって水稲作は大きく被害を受け、佐賀県の作況指数は80(平均反収422kg/10a)となり近年まれにみる凶作となった。特に「ヒヨクモチ」については出穂期にかけて襲来したため、甚大な被害を受け品種別の作況指数は70と著しく低下した。そのため、台風がヒヨクモチの外観品質に及ぼす影響と収量低下の解析を行い、籾の褐変程度による減収程度の関係を示した。

[成果の内容・特徴]
  1. 平成16年度水稲作付期間中に、九州北部の水稲に大きな影響を与えた台風は5個あり、中でもヒヨクモチは出穂前4日(8月30日)の台風16号及び出穂後4日目(9月7日)に襲来した台風18号により、台風18号襲来後7日目に48.6%の籾が褐変した(表1表2)。さらに台風23号では軽微ながら、籾の脱落もみられた。

  2. 台風16号、18号、21号の襲来時、防風枠(合板製の囲い)による防風処理を行うと、葉の裂傷や籾の褐変が軽減され、不稔率が9%程度軽減される(表2)。

  3. 台風による収量に対する被害は、不稔の発生により精籾重及び登熟歩合の低下が著しく、子実重(1.8mm上)は防風処理531kg/10aに対し、無処理447kg/10aと84kg/10aの減収である。同様に品質に対する被害は充実不良により、検査等級が2等から3等に低下する(表2表3)。

  4. 不稔は籾の褐変程度が高いものほど発生が高い。特にほとんどの籾が褐変し、枝梗も枯れていた褐変程度4以上では不稔率が更に高まる。また、1次枝梗と2次枝梗の褐変程度は大差なかったが、不稔率は2次枝梗で高い(図1)。

  5. 籾の褐変状況から区分した穂の被害程度と減収の関係は「多(褐変程度3.0)」では77%、「中(褐変程度1.8)」では25%、「少(褐変程度1.1)」では22%の減収となり、穂の褐変程度とその頻度で、減収程度が推定できる(表3)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 本年の台風被害調査における潮風害はなく、潮風害がある場合は適用できない。

  2. 籾の褐変は台風襲来後5日頃から明確に判別されるので、調査実施は襲来後7日から10日の間で行う。

  3. 本情報を活用することで、台風襲来後速やかに減収推定が可能となり、行政施策に反映できる。

[具体的データ]

表1 水稲作期間中に接近した台風の概要


表2 台風がヒヨクモチに及ぼした褐変籾の発生程度及び不稔率と減収

 
図1 籾の褐変程度と不稔率の関係



表3 穂の褐変程度別収量

[その他]
研究課題名:主要作物の品質を含めた作況と災害技術対策試験
予算区分 :県単
研究期間 :2004年度


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