カンショ「ジェイレッド」は後作ニンジンのネコブセンチュウ害を抑える
- [要約]
- 線虫抵抗性カンショ品種の「ジェイレッド」を栽培すると、畦間や土層の深さに関係なく、生育期間を通じてサツマイモネコブセンチュウの密度が低く抑えられる。後作としてニンジンを栽培すると、ニンジンの線虫被害、ネコブ指数がともに小さくなる。
- [キーワード]
- カンショ、線虫抵抗性、サツマイモネコブセンチュウ、ニンジン、輪作
- [担当]
- 九州沖縄農研・畑作研究部・上席研究官、地域基盤研究部・線虫制御研究室
[連絡先]電話0986-24-4272
[区分]九州沖縄農業・畑作、病害虫
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
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南九州畑作地帯における連作障害の主要因としては、サツマイモネコブセンチュウ(以下「ネコブセンチュウ」と略す)、ミナミネグサレセンチュウ(以下「ネグサレセンチュウ」と略す)を主体とする線虫被害が上げられる。これまでに、矮性のクロタラリアなど新たな線虫対抗植物を見出してきたが、緑肥作物では収穫物としての経済的な価値が低いため,その栽培に伴う労力や経費の増加を受け入れる余地が小さい。線虫抵抗性カンショ品種の「ジェイレッド」は、ネコブセンチュウのいずれのレースの増殖も抑えることがわかっており、減農薬を目指した輪作体系への導入が期待されている。ここでは、その線虫密度低減効果と有機栽培圃場における後作ニンジンのネコブ線虫害への影響を明らかにする。
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[成果の内容・特徴]
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「高系14号」は、挿苗3ヶ月後を最大としてネコブセンチュウ密度が増加するのに対して、「ジェイレッド」では、カンショの生育期間を通じ密度は低く保たれる。(図1)。
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土層別のネコブセンチュウの密度は、「高系14号」は畦間が狭いほど密度が高く、30〜40cmの土層まで線虫が生息しているのに対して、「ジェイレッド」では深層まで低く抑えられる(図2)。
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土層別のネグサレセンチュウの密度をみると、畦間が広いほど線虫密度が低くなる傾向を示したが、「ジェイレッド」の栽培による密度低減効果はみられない(図3)。
- 「ジェイレッド」後作のニンジン収量は、高系14号とほぼ同等であるが、線虫被害の程度やネコブ指数は矮性のクロタラリア(C.breviflora)と同様に低い(表1)。
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[成果の活用面・留意点]
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カンショ「ジェイレッド」はカンショとニンジンを組み合わせた減農薬輪作体系に導入できる。
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キャベツ、レタスなどネコブセンチュウに感受性の露地野菜についても、「ジェイレッド」の導入効果を個別に調査する必要がある。
- ネグサレセンチュウが優先する圃場では、「ジェイレッド」による線虫密度低減効果は期待できないので、線虫対抗植物としては矮性のクロタラリア(C.breviflora)などを用いる。
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[具体的データ]
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図1 時期別のネコブセンチュウ密度

図2 土層別のネコブセンチュウ密度

図3 土層別のネグセレセンチュウ密度

表1 前作が線虫密度とニンジンの線虫害に及ぼす影響
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[その他]
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研究課題名:有色カンショ、緑肥作物の多面的機能を利用した持続型生産管理技術の開発課題ID:07-03-02-01-19-04
予算区分 :ブラニチ4系、交付金
研究期間 :2003〜2005年度
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