泌乳牛に給与する飼料中のTDN含量と乳量推移および初回授精日数
- [要約]
- 泌乳牛にTDN含量74〜75%の飼料を給与すると、分娩後180日までの乳量増加に効果がある。また、初回授精日数80日未満を期待できるTDN・EE含量の飼料設計例は約74%以上・3.9%以下である。
- [キーワード]
- 泌乳牛、TDN含量、乳量、繁殖
- [担当]
- 福岡農総試・家畜部・乳牛チーム
[連絡先]電話092-925-5232
[区分]九州沖縄農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・普及
-
[背景・ねらい]
-
持続性の高い酪農経営を確立するためには、自給飼料の生産・給与を基軸とした高品質生乳の安定的生産や生涯生産性の向上を図る必要がある。そこで、福岡県の主要酪農地域における給与飼料の構成やその成分組成等の飼養条件と乳量及び繁殖性の実態を調査分析、問題点を摘出するとともに、調査データに基づく技術指導を実施した。その主要な技術指導内容であった泌乳前期牛に対する高TDN飼料給与について、乳量および繁殖性への影響を明らかにする。
-
[成果の内容・特徴]
-
-
飼料成分含量7項目の中で乳量と最も相関が高い項目はTDN含量(r=0.41)であり、牛群平均乳量が30kg以上(平均32.0kg)の農家では、30kg未満(平均28.1kg)の農家に比べ、乳期を通したTDN含量が高い。また、分娩後180日までの乳量差が牛群平均乳量に大きく影響する(図1)。
-
分娩後180日以降の乳量は、TDN含量の違いによる影響を受けにくく、この時期以降のTDN含量は、過肥を予防するためにも30kg未満の農家レベル(TDN含量71〜72%)が望ましい(図1、図2)。
-
繁殖性に関する判別分析結果から、初回授精日数80日未満が期待できるTDN含量とEE含量の飼料設計例はそれぞれ約74%以上、3.9%以下である(図3)。
-
[成果の活用面・留意点]
-
-
乳牛の生涯生産性向上技術として活用できる。
-
牛群平均乳量30kg以上の農家の場合、TDN充足率は分娩後30〜60日で96%、60日以降は概ね110〜120%の範囲で推移した。一方、30kg未満の農家では、TDN充足率が100%以上となるのは分娩後90日以降であり、その後は概ね100〜110%の範囲で推移した。
-
給与飼料の成分は、農家調査において個体毎の飼料給与量を実測(一部聞き取り)し、日本標準飼料成分表(1995、2001)及び近赤外分析結果(粗飼料)に基づき算出した。乳量および繁殖成績は牛群検定成績による。
-
乳量および繁殖成績との相関関係を調べた飼料成分含量7項目とは、TDN含量、CP含量、UIP/CP(バイパスタンパク質)含量、NFC(非繊維性炭水化物)含量、NDF(中性デタージェント繊維)含量、ADF(酸性デタージェント繊維)含量、EE(粗脂肪)含量である。
-
[具体的データ]
-

図1 牛群平均乳量別(30kg以上・未満)のTDN含量と乳量の推移

図2 牛群平均乳量別のBCS

図3 線形判別関数式(Z)による繁殖性(初回受胎率、初回授精日数)分類
-
[その他]
-
研究課題名:地域飼料特性を考慮した高品質生乳の安定生産技術
予算区分 :助成試験(地域基幹)
研究期間 :2001〜2003年度
目次へ戻る