Navigation>>九州沖縄農業研究センター >> 研究成果情報 >> 平成16年度目次

肥育牛へのビタミンA剤経口投与による肥育中期の血中ビタミンA濃度コントロール方法


[要約]
肥育中期において血中ビタミンA濃度の低下により飼料摂取量や日増体量が減少した場合、2週間間隔で体重1kg当たり10.6IU/日のビタミンAを7日間経口投与しすることで血中ビタミンA濃度を40〜60IU/dLにコントロールでき、同時に飼料摂取量を維持させることができる。

[キーワード]
ウシ、肉用牛、ビタミンA、飼料摂取量

[担当]
鹿児島畜試・肉用牛部

[連絡先]電話0995-48-2185	
[区分]九州沖縄農業・畜産草地(大家畜)	
[分類]技術・普及	

[背景・ねらい]
黒毛和種の肥育では、肥育中期におけるビタミンA(VA)の給与を制限し、16〜21ヵ月齢時の血中VA濃度を40〜60IU/dLにコントロールすることで脂肪交雑を向上させる肥育技術が普及している。しかし、VAの制限が厳しすぎると夜盲症、発育不良および筋肉水腫が発生することが報告されている。また、肥育農家ではVA欠乏時に添加するVA給与量が多すぎるために血中VA濃度を40〜60IU/dLに制御できず肉質向上につながっていない農家もみられる。そこで、VA給与の制限を行いながら飼養した黒毛和種去勢肥育牛においてVA欠乏症状発生時に、VAを給与し、VA給与量が血中VA濃度の上昇状況、飼料摂取量および日増体量に及ぼす影響を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
  1. 血中VA濃度が26IU/dLまで低下した去勢肥育牛(平均19.8ヵ月齢、6頭)に、体重1kg当たり10.6IU/日に相当するVA製剤を7日間経口投与した結果、血中VA濃度が51IU/dLまで上昇し、飼料摂取量も1頭当たり1.4kg増加した(図1図2)。また、日増体量もVA添加前と比べ0.38kg/日の増加がみられた(図3)。しかし、VAの添加終了後14日目の血中VA濃度はVA添加前の値まで低下し、同時に飼料摂取量も減少するため、14日目以降にVAを再度添加給与し、血中VA濃度をコントロールしながら飼料摂取量を維持する必要がある(図1図2図3)。

  2. 血中VA濃度が21IU/dLまで低下した黒毛和種去勢肥育牛(平均22.1ヵ月齢、6頭)に、体重1kg当たり21.2IU/日に相当するVA製剤を7日間経口投与した結果、血中VA濃度が69IU/dLまで上昇し、飼料摂取量も1頭当たり2.6kg増加した(図4図5)。また、日増体量もVA製剤投与前と比べ0.45kg/日の増加がみられた(図6)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 肥育中期の血中VA濃度を40〜60IU/dL程度に維持したい時期(16〜21ヵ月齢)には、体重1kg当たり10.6IU/日量のVA製剤を7日間給与する方法が有効である。

  2. 体重1kg当たり10.6IU/日量のVA製剤の添加終了後14日目の血中VA濃度はVA添加前の値まで低下し、同時に飼料摂取量も減少することから14日目以降にVAを再度添加する必要がある。

[具体的データ]

図1 体重当たり10.6IU量のビタミンA製剤の添加が去勢肥育牛の血中ビタミンA濃度に及ぼす影響


図2 体重当たり10.6IU量のビタミンA製剤の添加が去勢肥育牛の飼料摂取量に及ぼす影響


図3 体重当たり10.6IU量のビタミンA製剤の添加が去勢肥育牛の日増体量に及ぼす影響


図4 体重当たり21.2IU量のビタミンA製剤の添加が去勢肥育牛の血中ビタミンA濃度に及ぼす影響


図5 体重当たり21.2IU量のビタミンA製剤の添加が去勢肥育牛の飼料摂取量に及ぼす影響


図6 体重当たり21.2IU量のビタミンA製剤の添加が去勢肥育牛の日増体量に及ぼす影響

[その他]
研究課題名:低コスト・高品質牛肉生産のための飼養技術の確立
予算区分 :県単
研究期間 :2001年〜2004年度


目次へ戻る