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飼料イネ「モーれつ」の乾草調製に伴うβ-カロテン含量の推移


[要約]
飼料イネ「モーれつ」の水分含量および地上部β-カロテン含量は出穂後、熟期が進むにつれて低下する。飼料イネ乾草を稲ワラ代替として調製する時は、少なくとも、天日乾燥を刈取り後3日以上行うか、水分含量を20%以下まで低下させる必要がある。

[キーワード]
飼料イネ、β-カロテン、乾草調製、水分含量、「モーれつ」

[担当]
佐賀畜試・大家畜部・乳牛飼料研究担当係

[連絡先]電話0954-45-2030	
[区分]九州沖縄農業・畜産草地(草地飼料作)	
[分類]技術・参考	

[背景・ねらい]
近年、水田転作面積の増加に伴い、排水不良田でも栽培できる飼料イネの作付が推進されている。佐賀県では肥育農家が多いことから、飼料イネは乾草としての利用が見込まれるが、肥育農家で飼料イネ乾草を利用する際には肉質に影響を及ぼすと言われるβ-カロテン含量が問題となってくる。そこで、茎葉収量の多い飼料イネ専用品種「モーれつ」の乾草調製に伴うβーカロテン含量の動態を明らかにする。刈取り時期は、乾草調製に適すると言われる出穂期前後のみでなく、通常のワラ利用との比較や天候等による刈り遅れを想定して完熟期も調査した。

[成果の内容・特徴]
  1. 飼料イネ「モーれつ」の地上部β-カロテン含量と水分含量は出穂後、熟期の進行と共に低下する(図1)。ただし、完熟期に茎葉部のみ調製する場合はβ-カロテン含量が乳熟期並に高い。

  2. 飼料イネのβ-カロテン含量は、天日下で乾草調製を行うと乾燥日数が進むにつれて低下していく(図2)。稲ワラ代替として利用する場合は、少なくとも刈取り後3日以上天日乾燥を行うとβ-カロテン含量をかなり低下させることができる。

  3. 天日下で乾草調製中のイネの水分含量とβ-カロテン含量には高い相関があり、イネの水分含量が低下するほどβ-カロテン含量も低下する(図3)。稲ワラ代替として利用する場合は、少なくとも水分含量を20%以下まで低下させる必要がある。

  4. 刈取り後3日以上天日乾燥を行ったり水分含量が20%以下に低下したイネでも、梱包時のβ-カロテン含量は1.5〜38.7mg/kgDM(1.2〜31.8mg/kgFM)と幅があるため、給与の際は緑度等も参考にしてβ-カロテンレベルを判断する必要がある。

[成果の活用面・留意点]
  1. 完熟期にモアコンで刈取ると「モーれつ」の子実部はほぼ脱落してしまうので、脱粒回避のためにコンバイン利用が望ましい。

  2. 天日乾燥に伴うβ-カロテン含量推移は、降雨等でイネが濡れることがなかった場合に適用できる。また、モアによる刈取りや反転をほとんど実施しない場合は、イネの乾燥が進まずβ-カロテンの低下速度も緩やかであることが予測されるので留意する。

[具体的データ]

図1 飼料イネの熟期毎のβ-カロテン含量


図2 天日乾燥に伴うβ-カロテン含量推移


図3 天日乾燥中のイネ水分とβ-カロテン含量の関係

[その他]
研究課題名:飼料イネの省力栽培および乾草調製技術の開発
      飼料イネの乾草調製過程におけるβ-カロチン含量の推移と肉用牛への給与技術の確立
予算区分 :受託(21世紀プロ3系、ブランド・ニッポン3系)
研究期間 :2001年〜2005年度

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