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飼料イネ「モーれつ」乾草の貯蔵および再天日乾燥によるβ−カロテン含量低下


[要約]
飼料イネ乾草のβ−カロテン含量は開放条件で長期貯蔵することにより稲ワラ並まで低下する。ラップで密封した場合は長期貯蔵によるβ−カロテンの顕著な低下は望めないが、開封後に再天日乾燥を行うことで稲ワラ並まで低下させることができる。
[キーワード]
飼料イネ、β−カロテン、乾草、貯蔵、天日乾燥、ラップ

[担当]
佐賀畜試・大家畜部・乳牛飼料研究担当係

[連絡先]電話0954-45-2030	
[区分]九州沖縄農業・畜産草地(草地飼料作)	
[分類]技術・参考	

[背景・ねらい]
佐賀県では肥育農家が多いことから、飼料イネは乾草としての利用が見込まれるが、肥育農家で飼料イネ乾草を利用する際には肉質に影響を及ぼすと言われるβ−カロテン含量が問題となってくる。β−カロテンの低減には天日乾燥が有効だが、天候等の制約で天日乾燥が十分に行えずにβ−カロテン含量の低下が図れない場合がある。そこで、梱包後にβ−カロテン含量を低下させるために、飼料イネ乾草の貯蔵に伴うβ−カロテン含量の推移と、梱包解体後の低減方法を検討した。

[成果の内容・特徴]
  1. 出穂期に刈取りタイトベール(開放条件)およびロールベール・ラップ(密封条件)に梱包した飼料イネは、梱包前の天日乾燥日数が長いほど貯蔵後のβ−カロテン含量が低くなる(図1)。ただし、水分含量が高い状態で梱包を行い開放条件で貯蔵すると、貯蔵中にカビの発生や発熱が認められβ−カロテン含量は著しく低下する。

  2. 開放条件で貯蔵したイネ乾草のβ−カロテン含量は、長期貯蔵により稲ワラ並まで低下する(図2)。

  3. 密封条件で貯蔵したイネラップ乾草のβ−カロテン含量は、水分含量が高い梱包で貯蔵経過とともに低下していく傾向が見られるものの、稲ワラ並まで低下させることは難しい(図3)。

  4. イネラップ乾草を開封後、梱包を解体して再天日乾燥を行うことにより、β−カロテン含量は稲ワラ並まで低下する(図4)。再天日乾燥時は、反転せずに放置しておくよりも反転を実施した方がβ−カロテン含量の低下速度が速い(図5)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 飼料イネ乾草を稲ワラ代替として牛に給与する場合に活用できる。

  2. 梱包時に水分含量が高い場合は、火災の危険性と共に貯蔵中のカビ発生等による嗜好性の低下が著しいため、できるだけ密封を行い、好天時に再天日乾燥を実施するとよい。開放条件でカビの発生等が少なく貯蔵できる、イネ水分含量の目安は15%以下である。

  3. 飼料イネ乾草を給与する際は、乾燥日数や貯蔵条件、貯蔵期間の他に、イネ乾草の緑度を見るのもβ−カロテンレベルの判断材料となる。

[具体的データ]

図1 飼料イネの乾燥日数毎の貯蔵後β−カロテン含量


図2 飼料イネ乾草の長期貯蔵に伴うβ−カロテン含量推移(開放条件)


図3 飼料イネラップ乾草の長期貯蔵に伴うβ−カロテン含量推移(密封条件)


図4 ラップ乾草再天日乾燥中のβ−カロテン含量推移


図5 ラップ乾草開封5日後のβ−カロテン含量

[その他]
研究課題名:飼料イネの省力栽培および乾草調製技術の開発
      飼料イネの乾草調製過程におけるβ−カロチン含量の推移と肉用牛への給与技術の確立
予算区分 :受託(21世紀プロ3系、ブランド・ニッポン3系)
研究期間 :2001年〜2005年度

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