分娩前移行期における乳牛への適正蛋白質給与水準
- [要約]
- 乳牛の分娩前移行期において、給与飼料の乾物中CP含量を経産牛で12%、初妊牛で14%とすることにより、繁殖成績に影響なく乳生産が維持できる。
- [キーワード]
- 乳牛、分娩前移行期、蛋白質水準
- [担当]
- 熊本農研セ・畜産研・大家畜研究室
[連絡先]電話096-248-6433
[区分]九州沖縄農業・畜産草地(豚・鶏・畜産環境)
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
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乳牛の分娩前移行期は養分要求量が急増するため、この時期の栄養摂取状況が分娩後の産乳性および繁殖性を影響することが認識されている。しかし、蛋白質給与水準に関する研究は少なく、その飼養法については確立されていないのが現状である。そこで、分娩前移行期の適正栄養水準の確立を目的として、経産牛および初妊牛にそれぞれ分娩前移行期の飼料中CP含量の異なる2水準を設け、産乳性および繁殖性に及ぼす影響について検討する。
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[成果の内容・特徴]
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乾物摂取量は、経産牛・初妊牛とも両区に差はみられない。(表2)
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平均日乳量は、経産牛・初妊牛とも高CP区で高く推移するが、泌乳期の体重回復は高CP区で遅れる傾向にある。(表2)
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繁殖成績は、経産牛では受胎率、授精回数において低CP区で良好であり、初妊牛では高CPで受胎までの日数が延びる傾向にあるものの受胎率に差はみられない。(表3)
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分娩前移行期における尿中窒素排泄量および窒素蓄積量は、経産牛・初妊牛とも高CP区で有意に高くなる。特に、経産牛では窒素蓄積量より尿中窒素排泄量が増加し、初妊牛では尿中窒素排泄量より窒素蓄積量が増加する傾向にある。(図1)
以上のことから、乳牛の生涯生産性を高めるためには、分娩前移行期の飼料乾物中CP含量は、経産牛で12%程度、初妊牛で14%程度が望ましいと考えられる。
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[成果の活用面・留意点]
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正確な飼料分析・給与計算に基づき分娩前3週程度前から給与する。
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泌乳初期におけるエネルギー充足に注意する。
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[具体的データ]
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表1 飼料中の栄養濃度

表2 飼養および産乳成績(分娩後14週)

表3 繁殖成績(分娩後20週)

図1 窒素出納(分娩前移行期)
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[その他]
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研究課題名:分娩前後の飼養法の検討
予算区分 :県単
研究期間 :1999〜2003年度
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