「豊福早生」における根域通気とシートマルチ被覆の併用効果
- [要約]
- 「豊福早生」に根域通気を導入すると、未結果樹では細根量や根の総伸長量は対照区に比べ多い傾向である。また、根域通気とシートマルチ処理を併用することによって、累計収量は多く、屈折計示度、果皮着色は向上する傾向にある。
- [キーワード]
- ウンシュウミカン、根域通気、シートマルチ、糖度、収量
- [担当]
- 熊本農研セ果樹研・病虫化学研究室
[連絡先]電話0964-32-1723
[区分]九州沖縄農業・果樹、生産環境(土壌肥料)
[分類]技術・普及
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[背景・ねらい]
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根域通気とシート(多孔質フィルム)マルチ被覆の併用が熊本県育成品種「豊福早生」の生育、および果実の高品質安定生産に及ぼす影響を明らかにする。
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[成果の内容・特徴]
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「豊福早生」を苗の定植時(栽植間隔4.5m×1.8m123樹/10a)に、土壌表面から深さ20cmに多孔パイプ(¢50〜100mm)を畝方向に埋設し、パイプのつまり防止のためにパイプ周囲に貝殻を同時に埋設した区を設置した(図1)。
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定植4年目(未結果樹)における土壌断面の根群分布においては、径65mm以下のパイプを埋設した根域通気区の細根量や根の総伸長量は対照区に比べ多い(表1)。
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結果樹齢に達した「豊福早生」において、4年間の累計収量は根域通気とシートマルチ(以下マルチ)被覆併用で高くなる。また、根域通気の周囲に貝殻を設置することでパイプのつまり防止となり、通気による効果が継続される(図2)。
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果実の屈折計示度はマルチ被覆+根域通気処理区が高くなり、無被覆区では根域通気により果皮着色は優れる傾向にある(表2)。
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収量や果実品質から、パイプ径65mm+貝区が優れる(図2、表2)。
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[成果の活用面・留意点]
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根域通気は地下部の換気・乾燥・排水を促進するため、水田等を含む排水不良が懸念されるところに導入し、乾燥しやすい園地では土壌水分管理に注意する。
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埋設する多孔パイプの周囲には、土壌・根によるつまり防止のための資材(貝殻等)を入れる。
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根域通気の導入にかかる資材費は約21万円/10aである。
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[具体的データ]
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図1 根域通気システム概略図

表1 根域通気と根の伸長量(m)

図2 根域通気と多孔質フィルム併用による累計収量への影響

表2 根域通気と果実品質(2001〜2003年平均値)
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[その他]
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研究課題名:極早生温州のマルチ栽培による高品質安定生産のための栄養管理技術の開発
予算区分 :県単
研究期間 :2001〜2004年度
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