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不完全種子の胚培養による九倍体完全甘ガキ作出とその由来


[要約]
六倍体完全甘ガキである「富有」に「太秋」を交雑して得られる不完全種子の胚培養によって九倍体個体が獲得できる。九倍体個体のゲノムは、「富有」の卵細胞(n)と「太秋」の非還元性花粉(2n)の受精に由来する。

[キーワード]
カキ、九倍体、胚培養、非還元性花粉、不完全種子

[担当]
福岡農総試・果樹部・果樹育種チーム

[連絡先]電話092-922-4946	
[区分]九州沖縄農業・果樹	
[分類]科学・普及	

[背景・ねらい]
無核完全甘ガキ品種を育成するためには、完全甘ガキ同士の交雑で九倍体を作出する必要がある。しかし、既存の完全甘ガキ品種はすべて六倍体であり、通常の交雑育種では九倍体を作出できない。そこで、六倍体完全甘ガキ同士を交雑して得られる種子の中に含まれる不完全種子を利用して九倍体個体の作出を図るとともに、その由来を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
  1. 「富有」の雌花に「太秋」の花粉を交雑すると、80日後に不完全種子が総種子数の6.7%程度得られる。これらを5μMゼアチンと500mg/l酵母抽出物を含む1/2NMS培地で胚培養して得られる実生の一部は九倍体である(表1図1図2)。

  2. 4種類のSSRマーカーを用いた親子鑑定の結果、得られた九倍体実生は「富有」または「太秋」に特有な対立遺伝子のみを持っていることから、「富有」と「太秋」の交雑によって得られた実生であると判定される(表2)。

  3. 4種類のSSRマーカーで検出された九倍体実生の対立遺伝子はいずれも「太秋」に特有な対立遺伝子と同じであるが、「富有」に特有な対立遺伝子の一部がないことから、減数分裂が正常に行われずDNA量を正常花粉の倍量持つ非還元性花粉が九倍体の由来と判定される(表2)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 無核完全甘ガキ育成法として活用できる。

  2. 得られた九倍体実生は無核品種育成の素材として利用できる。

[具体的データ]

表1 ‘富有’ב太秋’の不完全種子からの九倍体実生獲得数


表2 ‘富有’ב太秋’のSSRマーカーを用いた実生の親子鑑定


図1 交雑80日後に摘出した種子
注)左:不完全種子右:完全種子


図2 九倍体実生の染色体
注)2n=135(9X)

[その他]
研究課題名:ゲノム操作等によるカキ育種技術の開発
予算区分 :県単
研究期間 :2001〜2005年度


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