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温室内の湿度制御によるキュウリの病害発生抑制と生育・収量の向上


[要約]
キュウリのハウス抑制栽培で、温室内の相対湿度を90%以下に制御すると多湿条件で発生するべと病、褐斑病の発生を大幅に抑制できる。健全葉が確保されて生育はやや旺盛になる。

[キーワード]
キュウリ、湿度制御、べと病、褐斑病

[担当]
宮崎総農試・野菜部・栽培科

[連絡先]電話0985-73-2332	
[区分]九州沖縄農業・野菜花き	
[分類]技術・参考	

[背景・ねらい]
西南暖地の施設栽培では多湿に起因する病害が多発する傾向がある。このため、宮崎県内の産学官共同研究で開発した吸収式除湿機による温室内の湿度制御を行い、抑制キュウリの生育、収量、品質及び病害発生に対する効果を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
  1. 温室内の相対湿度を90%以下に制御すると、健全葉が多く確保され、生育はやや旺盛となり(表1)草勢低下が防止できる。湿度を制御していない健全葉との光合成速度は差がない(データ省略)。

  2. 温室内の相対湿度を90%以下に制御しても、栽培期間の短い作型では制御をしない場合と総収量、可販果収量に差はない(表2)。

  3. 温室内の相対湿度を90%以下に制御すると、べと病、褐斑病の発生が大幅に抑制される(表3)。うどんこ病の発生は差がない(表3)。

  4. 温室内の相対湿度を90%以下に制御すると、べと病、褐斑病に対する薬剤散布回数は湿度制御を行わないハウスに比べて約3分の2(表4)でも低い発病度を維持できる(表3)。

  5. 除湿機は、ハウス内気温が高く加温機が稼働せず多湿となりやすい晩秋や初冬は降雨に関係なく稼働し、加温機が頻繁に稼働する低温期は降雨による多湿時が主体である(図1)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 栽培期間が長く、栽培初期は加温機が稼働せず多湿となる促成栽培や、栽培後半は加温機が稼働せず多湿となる半促成栽培では、病害の発病を抑制し、健全葉が多く確保でき草勢が維持されるので栽培後期の収量、品質の低下防止が期待できる。

  2. 湿度制御は、発病抑制の観点からは定植後早めに開始することが望ましい。

  3. 耕種概要等

    供試品種 アルファー節成(台木ひかりパワー)

    試験区の構成間口6m、奥行き20mの単棟ビニルハウスを2棟用い湿度を制御する除湿区と無処理の対照区を設けた。

    播種2003年8月26日、接木9月1日、定植9月16日、主枝摘心10月2日

    栽植距離畦幅180cm、株間45cm、a当たり123株植え

    施肥量 基肥a当たり堆肥400kg、苦土石灰16kg、N3.0kg、P2O53.0kg、K2O3.0kg

          追肥a当たりN2.3kg、P2O51.2kg、K2O2.6kg

    仕立て方法 主枝は第20節で摘心し、主枝の第5節以下の一次側枝と雌花は摘除した。主枝の第6〜9節と第17節以上の1次側枝は1節で摘心し、第10〜16節の1次側枝は2節で摘心した。2次側枝以降の側枝は全て2節で摘心し、摘果は行わなかった。

    収穫期間 2003年10月10日〜12月20日。

    温湿度制御 温室内気温は、午前中摂氏28度、午後摂氏25度、最低夜温摂氏14度を目標に管理した。湿度制御は、除湿開始を温室内の相対湿度90%とし、2003年10月10日から12月20日まで行った。

[具体的データ]

表1 栽培終了時の生育z


表2 収量z(a当たり)


表3 べと病および褐斑病の発病状況z


表4 べと病および褐斑病を対象とした薬剤の散布回数


図1 雨量と除湿量の推移(10月28日〜12月20日)

[その他]
研究課題名:吸収式除湿機による温室用空調システムと利用技術の開発
予算区分 :国庫委託(先端技術を活用した農林水産研究高度化事業)
研究期間 :2003〜2005年度


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