高設栽培のイチゴ「さちのか」と「とよのか」の出蕾・開花に対する培地加温の効果
- [要約]
- 培地加温により最低培地温を摂氏12度以上確保すると、第2次腋果房までの出蕾・開花は早まり、初期収量が増加する。最高培地温が摂氏25度前後になると、摂氏20度前後の場合と比較して、「さちのか」の腋果房の出蕾・開花が遅れ、初期収量も増加しない。
- [キーワード]
- イチゴ、さちのか、とよのか、高設栽培、培地加温、出蕾・開花
- [担当]
- 九州沖縄農研・野菜花き研究部・耐暑性野菜生産研究室
[連絡先]電話0942-43-8376
[区分]九州沖縄農業・野菜花き、野菜茶業・野菜栽培生理
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
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イチゴの栽培では、省力・軽労化を目的に高設栽培が導入されている。促成作型の高設栽培では培地容量が少なく、培地温度が変化しやすい。これまでに様々な培地加温の方法が考案されているが、効果的に生育、花芽分化および収量性を制御できる温度域やその品種間差は明らかにされていない。
そこで、促成作型の高設栽培における「さちのか」および「とよのか」の出蕾・開花および収量特性に対する培地加温の効果を明らかにする。
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[成果の内容・特徴]
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ポリプロピレン製の栽培槽のイチゴ高設ベンチでは、培地加温を行わないと培地の最低温度はハウス内気温近くまで低下する(表1)。
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「さちのか」、「とよのか」で栽培期間中の最低培地温が摂氏12度以上になるように培地加温(加温1〜3)を行うと、頂果房の収穫開始ならびに第1および2次腋果房の出蕾・開花は早まる。しかし、「さちのか」の最高培地温が摂氏25度前後となるような培地加温(加温1)では、摂氏20度前後の培地加温(加温2)に比較して、第1および2次腋果房の出蕾・開花が遅れる。最低培地温が摂氏10度(平均培地温摂氏13〜14度)になるように加温(加温4)しても、「さちのか」では頂果房と第1次腋果房の、「とよのか」では頂果房の出蕾・開花の促進効果は見られない(表2)。
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「とよのか」では1〜2月の初期収量は培地温度の高い方が多くなるが、「さちのか」では最高培地温が摂氏25度前後となるような培地加温(加温1)を行うと、摂氏20度前後の培地加温(加温2)に比較して、初期収量は低下する(図1)。
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出蕾・開花を早め、初期収量を増加させる培地温度は、「さちのか」では最低摂氏15度、最高摂氏20度前後、「とよのか」では最低摂氏15度、最高摂氏25度前後が適当である。
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[成果の活用面・留意点]
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成果は、小型ポット(商品名、愛ポット)で育苗し、8月下旬から窒素中断を行った「さちのか」、「とよのか」の自然花芽分化苗を10月上旬にビニルハウス内の高設ベンチに定植したものである。加温1、2、3および4は、温床線(250W)を用いて、それぞれ最低培地温を25、20、15および摂氏10度に設定して加温した。
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栽培槽は深さ12cmの半円形であり、培地にはピートモス、ヤシガラ、パミス、バーミキュライトを混合したものを用いた(約2.3L/株)。定植後、液肥(大塚ハウス1号、2号、5号を混合、EC0.8dS/m)を潅水をかねて施用した。
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培地加温により、出蕾・開花ならびに収量性を制御するうえでの、基礎資料として活用できる。
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[具体的データ]
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表1 栽培期間中の地温(
)zとハウス内気温(
)の推移

表2 各果房の出蕾・開花・収穫開始日に及ぼす培地加温の影響

図1 月別収量(g/株)に及ぼす培地加温の影響
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[その他]
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研究課題名:省力適性品種の生理・生態特性の解明と生育制御技術の確立
課題ID:07-05-02-01-04-04
予算区分 :超省力園芸
研究期間 :2001〜2004年度
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