ヤマイモキチナーゼ遺伝子導入によるキクの白さび病抵抗性の増強
- [要約]
- キク「秀芳の力」にヤマイモキチナーゼ遺伝子を導入した形質転換体の中から、ヤマイモキチナーゼの発現量が高く、白さび病に強い抵抗性を示す系統を選抜した。
- [キーワード]
- キク、ヤマイモキチナーゼ、形質転換、白さび病耐病性
- [担当]
- 福岡農総試・バイオテクノロジー部・遺伝子操作チーム
[連絡先]電話092-924-2970
[区分]九州沖縄農業・野菜花き
[分類]科学・参考
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[背景・ねらい]
- キク白さび病(puccinia horiana)は空気伝染性病害で、施設栽培キクの重要病害であるため、抵抗性の付与が育種目標の一つである。しかし、交雑育種に利用できる抵抗性品種が少ないため、白さび病耐病性品種育成は進んでいない。そこで、病原糸状菌の細胞壁溶解が期待できるキチナーゼの遺伝子を導入し、白さび病に強い抵抗性を示す形質転換キクを獲得する。
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[成果の内容・特徴]
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ヤマイモキチナーゼ遺伝子が導入された形質転換体中約30%の系統がTEBIA法により、キチナーゼタンパク質の発現が確認された(表1)。
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PCRにより遺伝子導入が確認された形質転換キクのうち、生育良好な220系統の白さび病耐病性を湿室で評価した結果、非形質転換体に比べて白さび病冬胞子堆形成が少ない5系統が得られた(表1、図1、図2)。さらに、冬至芽においても、白さび病冬胞子堆形成(自然発生)が明らかに少ないことが認められた(データ略)。
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ヤマイモキチナーゼの発現量が多いほど、白さび病冬胞子堆形成量は低く、強い抵抗性を示す(図2)。
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[成果の活用面・留意点]
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ヤマイモキチナーゼ遺伝子のキクへの導入は、白さび病抵抗性品種育成に応用できる。
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得られた抵抗性系統は、特性や環境に対する安全性を閉鎖温室、非閉鎖温室、隔離圃場で確認する必要がある。
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[具体的データ]
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表1 白さび病耐病性の形質転換キク`秀芳の力'の育成経過

図1 湿室におけるキク培養株の白さび病接種検定と耐病性が向上した形質転換体

図2 ヤマイモキチナーゼ発現量と白さび病冬胞子堆形成評点との関係
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[その他]
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研究課題名:遺伝子組換えによるキク等の新品種の育成
予算区分 :県単
研究期間 :2000〜2004年度
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