Navigation>>九州沖縄農業研究センター >> 研究成果情報 >> 平成16年度目次

黒ボク土茶園における有機質肥料の窒素無機化特性


[要約]
茶園でよく用いられる有機質肥料(菜種油粕、大豆粕、肉骨粉、魚粉)の黒ボク土茶園における可分解性窒素量は全窒素含量の59〜89%で、地温摂氏25度では可分解性窒素量の90%が8〜12日で無機化する。無機化速度の温度に対する依存性は有機質肥料により異なり、肉骨粉>菜種油粕>魚粉>大豆粕の順である。

[キーワード]
チャ、有機質肥料、窒素無機化、黒ボク土、無機化特性、速度論的解析

[担当]
鹿児島茶試・環境研究室

[連絡先]電話0993-83-2811	
[区分]九州沖縄農業・茶業、生産環境	
[分類]技術・参考	

[背景・ねらい]
茶園では多くの有機質肥料が施用されているが、その窒素無機化速度は温度によって強く影響されるため、時期別の窒素供給量など不明な点も多い。そこで、各種有機質肥料の窒素無機化特性を反応速度論的解析法を用いて明らかにする。

[成果の内容・特徴]
  1. 菜種油粕、大豆粕、肉骨粉、魚粉の黒ボク土茶園における可分解性窒素量は全窒素含量の59〜89%で、地温摂氏25度では1日当たりの窒素無機化率(無機化速度)は20〜28%で、可分解性窒素量の90%が8〜12日で無機化する(表1)。

  2. 無機化速度の温度に対する依存性(温度係数)は有機質肥料により異なり、肉骨粉>菜種油粕>魚粉>大豆粕の順であり、肉骨粉、菜種油粕の1ヶ月間の積算無機化率は、地温の低い12月〜2月には地温の高い夏季の半分程度である(表1図1)。

  3. 菜種油粕を冬季から春季にかけて施用する場合、11月上旬の施用では12月末までに窒素が供給されるが、12月上旬、1月上旬並びに2月上旬に施用では、地温が低いため、一番茶摘採前まで窒素が徐々に供給される。また、菜種油粕を3月上旬及び4月上旬に施用する場合、地温の上昇により一番茶摘採前に窒素の大部分が供給される(図2)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 黒ボク土茶園における有機質肥料の効率的な施肥法に活用する。

  2. 有機質肥料の無機化特性値は以下の方法で求めた。

    1)有機質肥料(菜種油粕、大豆粕、肉骨粉、魚粉)を黒ボク土茶園土壌に添加し(窒素として150mg/100g相当)、3段階(摂氏15、20、25度)条件で無機化試験を行う。

    2)各温度の無機化量を単純型モデルN=No[1-exp(-kt)](N:窒素無機化率(%)、No:可分解性窒素量(%)、k:無機化速度定数(1/日)、t:摂氏25度変換日数(日))にあてはめ、無機化特性値を求めた。

    3)無機化試験に供試した土壌は、鹿児島県茶業試験場内の牛ふん堆肥700〜800kg/10aを3年間、秋に連用し、年間窒素施肥量が50kg/10aのほ場から0〜10cmの深さで採取した多腐植質黒ボク土を用いた。土壌の化学性を表2に示す。

[具体的データ]

表1 有機質肥料の無機化特性値


図1 有機質肥料の月別窒素無機化率


図2 菜種油粕の施用時期別窒素無機化予測(地温:鹿児島茶試平年値)


表2 供試土壌の化学性

[その他]
研究課題名:多様な品種特性に適応した環境保全型栽培技術の確立
予算区分 :県単
研究期間 :2003〜2004年度


目次へ戻る