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カンキツの後期黒点病と褐色腐敗病の同時防除剤とその耐雨性および効果的使用法


[要約]
8月中下旬が防除適期であるカンキツの後期黒点病と褐色腐敗病の同時防除剤としてマンゼブ水和剤400倍が有効で、散布後の累積降雨量300mmまで、または散布28日後まで効果が持続する。ただし、一部の殺ダニ剤や殺虫剤と混用散布すると耐雨性が低下するので,単用散布が望ましい。

[キーワード]
カンキツ、黒点病、褐色腐敗病、殺菌剤、耐雨性、残効

[担当]
佐賀県果樹試験場・病害虫研究担当係

[連絡先]電話0952-73-2275	
[区分]九州沖縄農業・病害虫	
[分類]技術・普及	

[背景・ねらい]
カンキツ病害のなかで8月中下旬以降に問題になる後期黒点病と褐色腐敗病に対する有効な同時防除法を確立するために、有効薬剤の選抜と耐雨性の解明を行う。さらに、両病害の防除適期はチャノキイロアザミウマやミカンハダニ、ミカンサビダニの防除適期でもあるため、殺虫剤や殺ダニ剤の混用が病害防除剤の効果に及ぼす影響を解明する。

[成果の内容・特徴]
  1. 褐色腐敗病に対する登録薬剤の中ではマンゼブ水和剤400倍、銅・メタラキシル水和剤750倍の両剤で200mmの人工降雨処理条件下でも防除価100が維持される。これらの剤に比べてキャプタン・有機銅水和剤500倍の耐雨性はやや劣り、クレソキシムメチル水和剤2,000倍は大きく劣る(表1)。

  2. 褐色腐敗病に対してマンゼブ水和剤400倍、銅・メタラキシル水和剤750倍では散布後の累積降雨量が300mmまで防除効果が維持され、すぐれた防除効果を示す。しかし、これまで黒点病と褐色腐敗病の同時防除剤として用いてきたキャプタン・有機銅水和剤の耐雨性は低く、累積降雨量200mm時点で効果は消失する。なお、マンゼブ水和剤600倍の効果は不十分である(表2表3)。

  3. マンゼブ水和剤400倍、600倍はともにすぐれた黒点病防除効果を示す。一方、キャプタン・有機銅水和剤500倍では累積降雨量約250mm時点での効果は低く、黒点病防除剤としても実用的ではない(表4)。

  4. 薬液付着重量はマンゼブ水和剤400倍の単用散布の場合に比べて、ミルベメクチン水和剤2,000倍、MEP乳剤1,000倍、PAP乳剤1,000倍を混用した場合に大幅に減少する。供試した20薬剤中6薬剤はマンゼブ水和剤400倍に混用することによって耐雨性に影響を及ぼすことが考えられ、その結果、マンゼブ水和剤400倍の褐色腐敗病に対する防除効果が低下する。その程度はミルベメクチン水和剤>ビフェナゼート水和剤>PAP乳剤=フルアクリピリム水和剤=ジノテフラン水溶剤>MEP乳剤の順である(表5;耐雨性の低下がみられない薬剤については省略)。

[成果の活用面・留意点]
  1. カンキツ類の生育後期(8月下旬以降)に問題になる黒点病と褐色腐敗病との効率的な同時防除が可能になる。

  2. 使用するマンゼブ水和剤はジマンダイセン水和剤である。ペンコゼブ水和剤では十分な効果は期待できない。

  3. 混用散布の場合は耐雨性が低下する場合があるので、散布後の累積降雨量を考慮して次回の散布を計画する必要がある。この場合、マンゼブ水和剤が使用回数、収穫前使用日数の制限から散布できない場合には、銅・メタラキシル水和剤(収穫前使用日数14日)、ホセチル水和剤(同7日)を使用する。

[具体的データ]

表1 カンキツ褐色腐敗病に対する登録薬剤の人工降雨条件下(200mm)での耐雨性の評価a)


表2 カンキツ褐色腐敗病に対する各種薬剤の人工降雨条件下における防除効果の推移


表3 カンキツ褐色腐敗病に対する各種薬剤の防除効果の持続性a)


表4 カンキツ黒点病に対する各種薬剤の防除効果の持続性(接種試験)


表5 マンゼブ水和剤に対する他剤の混用が薬液付着とカンキツ褐色腐敗病防除効果に及ぼす影響

[その他]
研究課題名:カンキツの後期黒点病と褐色腐敗病の同時防除剤の耐雨性解明と効果的使用法の開発
予算区分 :県単
研究期間 :2002年〜2005年


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