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TYLCVとトマト遺伝子の同時検出によるトマト黄化葉巻病の効率的遺伝子診断法


[要約]
トマト黄化葉巻病の遺伝子診断において、トマト遺伝子を増幅するHscプライマーとTYLCV遺伝子を増幅するNTGプライマーを同時に用いることにより、トマトとTYLCVの遺伝子を同時に検出でき、操作の確実性の判断や診断の効率化ができる。

[キーワード]
トマト、黄化葉巻病、TYLCV、診断、PCR

[担当]
長崎総農林試・環境部・病害虫科

[連絡先]電話0957-26-3330	
[区分]九州沖縄農業・病害虫	
[分類]技術・参考	

[背景・ねらい]
トマト黄化葉巻病の被害拡大防止策の一つとして、早期診断による発病株の抜き取りが肝要であるが、現在行われているPCRを用いた遺伝子診断は、技術的な習熟が必要であり、新たに診断システムを立ち上げる際には、核酸抽出等、PCRの一連の作業工程において問題が生じやすく、陰陽性の判断に支障を来すこともある。また、診断を行える機関は限られており、多量のサンプルが集中して持ち込まれるなどして、操作上のミスも生じることが懸念される。現在のPCRにおいては、想定のバンドがあることで陽性の判断はできるが、一方、バンドがない場合は陰性かDNAの抽出操作上のミスかが厳密に判断できない。

そこで、本病のPCRによる遺伝子診断において、TYLCVとトマトの遺伝子を同時に検出することにより、操作の確実性を判断し、診断の効率化を図る。

[成果の内容・特徴]
  1. トマト遺伝子の増幅にはHscプライマーを用い、その想定されるバンドサイズは約1.0kbである(表1)。

  2. HscプライマーとTYLCVの遺伝子を増幅するNTGプライマー(大貫ら、2000)との組み合わせによる同時検出では、トマトおよびTYLCV由来のそれぞれ想定される1.0kbおよび2.4kbのバンドが得られる(図1)。

  3. 両プライマーの組み合わせにおいては、生葉および抽出後凍結保存した陽性サンプルから想定の2本のバンドが得られる(図1)。

  4. PCR反応液組成は2種のプライマーを等量混合して行い、反応条件は定法(大貫ら、2000)に従う(表2)。

[成果の活用面・留意点]
  1. サンプルのウイルス濃度が低い場合、Hscプライマーの影響により、TYLCVのバンドが得られないことがある。

  2. Hscプライマーはトマトにおいて保存性の高い領域にてデザインしているが、ハウス桃太郎、ハウス桃太郎コルト、桃太郎J、優美、麗容、レディーファースト、千果、以外の品種における同時検出では、あらかじめ想定のバンドが得られるか否かを確かめる必要がある。

[具体的データ]

表1 トマト遺伝子およびTYLCV遺伝子増幅プライマーの塩基配列


図1 NTGおよびHscプライマーによるTYLCVおよびトマトDNAの同時検出


表2 同時検出におけるPCR反応液の組成と反応条件

[その他]
研究課題名:トマト黄化葉巻病の病原ウイルス及び媒介虫シルバーリーフコナジラミの生態解明に基づく環境保全型防除技術の確立
予算区分 :国庫補助(地域新技術)
研究期間 :2001〜2003年度


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