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トマト黄化えそウイルス(TSWV)を保毒したミカンキイロアザミウマのピーマン圃場における越冬


[要約]
ピーマン黄化えそ病が発生したピーマン圃場では、ミカンキイロアザミウマがピーマン果実残渣上でトマト黄化えそウイルス(TSWV)を保毒したまま成幼虫態で越冬する。ピーマン果実残渣が腐敗した後、ミカンキロアザミウマは周辺雑草に分散し、次期作のピーマンにTSWVを媒介する。

[キーワード]
越冬、トマト黄化えそウイルス(TSWV)、ミカンキイロアザミウマ、ピーマン

[担当]
大分農技セ・植物防疫部

[連絡先]電話0978-37-1141	
[区分]九州沖縄農業・病害虫	
[分類]技術・参考	

[背景・ねらい]
大分県大野郡を中心とした夏秋ピーマン雨よけ栽培産地では、1998年以降にピーマン黄化えそ病が毎年恒常的に発生している。特に、3月下旬の定植直後に圃場で発生する場合が多く、現地では問題となっている。病原ウイルスであるトマト黄化えそウイルス(TSWV)は主にミカンキイロアザミウマにより媒介されることが知られているが、冬期の動態は明らかにされていない。そこで、TSWVを保毒したミカンキイロアザミウマの越冬実態について調査した。

[成果の内容・特徴]
  1. TSWVを保毒したミカンキイロアザミウマは冬期のピーマン残渣および雑草上で越冬する。保毒虫はピーマン定植期にあたる3月下旬から4月上旬まで発生が認められる(図1)。

  2. ピーマン果実残渣は3月上旬まで認められ、この時期まで高率にTSWVに感染している(表1)。また、その残渣からは2月下旬までTSWVを保毒したミカンキイロアザミウマ成虫が確認される。

  3. ミカンキイロアザミウマは、ピーマン果実残渣の腐敗後、ホトケノザに一時的に分散し、その後カラスノエンドウ、ヨモギ、オオイヌノフグリ、ウシハコベ、ナズナ、シロクローバへと分散する(表2)。

  4. 粘着トラップを用いた調査からも、3月上旬にピーマン果実残渣から雑草へ保毒虫が分散することが確認される(図2)。

  5. 現地慣行栽培では、定植期にあたる4月上旬に定植したピーマン苗にTSWV感染が確認されたことから(表3)、次期作へ伝搬することが実証された。

[成果の活用面・留意点]
ピーマン黄化えそ病の発生地では、以下の点を念頭に置いて、防除対策指導のための資料とする。

  1. ピーマン果実残渣を除去することで、TSWVとTSWV保毒アザミウマの越冬を抑制できる。

  2. ミカンキイロアザミウマの発生数およびTSWV保毒率を調査し、定植時の防除を徹底することで、ピーマン黄化えそ病の発生を抑制することができる。

[具体的データ]

図1 冬期におけるピーマン残渣および雑草におけるミカンキイロアザミウマ成虫のTSWV保毒虫率推移


表1 ピーマン果実残渣のTSWV感染および採集されたミカンキイロアザミウマ成幼虫の保毒状況


表2 ピーマン残渣および冬期雑草におけるミカンキイロアザミウマ成幼虫密度推移


図2 冬期における青色粘着トラップに誘殺されたミカンキイロアザミウマ捕殺数推移およびそのTSWV保毒率


表3 ピーマン苗トラップのTSWV感染状況

[その他]
研究課題名:農作物の病害虫防除技術
予算区分 :県単
研究期間 :2004年度


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