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促成ピーマンにおける天敵農薬タイリクヒメハナカメムシとコレマンアブラバチを利用した害虫防除体系


[要約]
促成ピーマンにおいて、アザミウマ類に対してはタイリクヒメハナカメムシ0.5頭/m2の秋季2週連続放飼により、アブラムシ類に対してはコレマンアブラバチ500頭/15aをバンカープラントと併用して秋季に1回放飼する方法により、それぞれ栽培期間を通して高い防除効果が得られる。

[キーワード]
促成ピーマン、タイリクヒメハナカメムシ、コレマンアブラバチ、バンカープラント、ムギクビレアブラムシ

[担当]
鹿児島県農業試験場・病虫部

[連絡先]電話099-268-3231	
[区分]九州沖縄農業・病害虫	
[分類]技術・参考	

[背景・ねらい]
施設ピーマンを対象に、天敵農薬を中心とし、物理的・耕種的防除法を組み合わせた総合的防除技術を確立し、化学農薬の低減と省力的な環境保全型防除の確立を図る。

[成果の内容・特徴]
  1. アザミウマ類に対して11月中旬までにタイリクヒメハナカメムシ0.5頭/m2を1週間間隔で2回放飼することにより、栽培期間を通して高い防除効果が得られる(図1)。

  2. ワタアブラムシとモモアカアブラムシに対してコレマンアブラバチ500頭/15aをバンカープラントと併用して秋季に1回放飼する方法により、本天敵の必要量を維持でき、高い防除効果が得られる(図2)。

  3. バンカープラント法は、コレマンアブラバチの餌となるピーマンを加害しないムギクビレアブラムシをムギ類を用いてほ場内で増殖させ、その後天敵を放飼して増殖させる方法である。栽培期間中ムギクビレアブラムシ及びコレマンアブラバチによるマミーを維持するために、1ケ月以内の間隔で以下1〜3の手順を繰り返す(図2)。

    1)ムギ類をピーマン株付近の1ケ所に播種(フラワーポット使用も可)。

    2)2〜3週間後、ムギ上にムギクビレアブラムシを接種し、超細目の防虫網で被覆。

    3)ムギクビレアブラムシが増殖した頃(接種2〜3週間後)に防虫網を除去。

  4. 以上の防除体系により、アザミウマ類およびアブラムシ類に対する薬剤散布を削減させることができる(表1)。

[成果の活用面・留意点]
  1. タイリクヒメハナカメムシの放飼は、定植時処理の化学農薬による影響が消失する定植1ケ月後以降に行う。

  2. タイリクヒメハナカメムシによる防除効果は遅効的であり、また、放飼直前以降に使用できる化学農薬が制限されるため、放飼7〜10日前までに化学農薬により全ての害虫生息密度をほぼゼロにする。その際は使用農薬の天敵への影響が残る日数に注意する。

  3. タイリクヒメハナカメムシは新芽葉に産卵するため,放飼後1ケ月間はピーマンの極端な切り戻しはしない。

  4. コレマンアブラバチが寄生しないジャガイモヒゲナガアブラムシによる被害を確認した場合は、天敵に影響の少ない化学農薬によるスポット散布を行う。

  5. 天敵類放飼後に農薬による病害虫防除を行う場合は、天敵類に影響のない農薬を選択する。

[具体的データ]

図1 アザミウマ類とタイリクヒメハナカメムシの生息数および被害果実数の推移(平成15年度)


図2 天敵利用体系におけるアブラムシ類の発生推移(平成14年度)


表1 天敵利用体系と慣行防除体系におけるアザミウマ類およびアブラムシ類対象農薬の使用回数及び薬剤費用の比較(平成15年度)

[その他]
研究課題名:生物的防除資材を組み入れた施設ピーマン病害虫の防除体系の確立
予算区分 :県単
研究期間 :2002〜2003年度


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