トウモロコシ品種のワラビー萎縮症抵抗性の簡易検定法
- [要約]
- フタテンチビヨコバイは、イネの芽出し苗を用いて累代飼育が可能である。累代飼育虫を用いて、播種後6日目のトウモロコシ幼苗に成虫を放飼して草丈伸長量とワラビー萎縮症の病徴スコアを測定することによって、抵抗性程度の簡易な検定が可能である。
- [キーワード]
- フタテンチビヨコバイ、累代飼育、ワラビー萎縮症、抵抗性検定、飼料用二期作トウモロコシ
- [担当]
- 九州沖縄農研・地域基盤研究部・害虫管理システム研究室
[連絡先]電話096-242-7731
[区分]九州沖縄農業・病害虫
[分類]科学・参考
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[背景・ねらい]
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フタテンチビヨコバイCicadulina bipunctataは、アジア熱帯地域を中心に九州中部を北限として分布するイネ科雑草生息性昆虫で、トウモロコシにワラビー萎縮病と呼ばれる萎縮症状を引き起こす。日本では、熊本県の一部等の飼料用二期作トウモロコシでワラビー萎縮症の被害が局地的に発生しているが、近年、虫の分布域と被害の発生地域が急速に拡大している。フタテンチビヨコバイの加害に対して抵抗性を示すトウモロコシの実用品種は1品種のみであり、今後、新たに抵抗性程度の強い品種を選抜・育成するために、本種の簡易累代飼育法と幼苗を用いた室内での抵抗性簡易検定法を確立する。
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[成果の内容・特徴]
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フタテンチビヨコバイ(図1)はイネ芽出し苗を餌として容易に大量飼育が可能で、摂氏25度16時間日長の条件下では1世代28〜35日で累代飼育できる。1世代の増殖効率は3.7〜3.9倍である。この方法を用いて2年間以上累代飼育した系統を用いても、野外虫同様にワラビー萎縮症が再現するため、飼育虫を抵抗性検定に用いることができる。
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播種後6日のトウモロコシ(2葉期)にフタテンチビヨコバイの成虫2対を3日間放飼して、放飼虫回収後6日間摂氏25〜30度の温室に置いて草丈伸長量を測定すると、抵抗性品種(「30D44」と「30D80」)では感受性品種(「3081」と「3470」)に比べて草丈伸長量が多い(図2)。
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ワラビー萎縮症(図1)の病徴のスコア値は、抵抗性品種では低く感受性品種では高い値を示す(図3)。
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上記の方法で、フタテンチビヨコバイの加害に対するトウモロコシのワラビー萎縮症抵抗性程度の品種間差異を簡易に判定できる。
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[成果の活用面・留意点]
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現在、フタテンチビヨコバイの分布域は局地的であるため、圃場における抵抗性検定が困難な場合が多い。本方法はそのような地域での抵抗性品種素材のスクリーニングに活用できる。
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[具体的データ]
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図1 フタテンチビヨコバイの成虫(左)と、本種の加害によるトウモロコシの葉身裏面の葉脈がこぶ状に隆起したワラビー萎縮症の症状(右)

図2 フタテンチビヨコバイ放飼終了後の草丈伸長量の品種間差異

図3 ワラビー萎縮症の病徴スコアの品種間差異
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[その他]
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研究課題名:フタテンチビヨコバイによる飼料用とうもろこし被害機構の解明と品種抵抗性検定法の開発
課題ID:07-08-04-*-18-04
予算区分 :交付金
研究期間 :2004〜2006年度
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