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重粘土地帯でのカーネーションのかん水施肥栽培における給液モデル


[要約]
重粘土地帯でのカーネーションのかん水施肥栽培における給液モデルを開発。給液モデルに基づき、窒素施肥量37〜41kg/10a、かん水量500〜600t/10aで慣行施肥栽培と同等の収量・形質が確保され、慣行施肥栽培における窒素施肥量(県基準60kgN/10a)の30〜40%が低減できる。

[キーワード]
重粘土地帯、カーネーション、かん水施肥栽培、給液モデル

[担当]
佐賀農業セ・土壌環境部・土壌・肥料研究担当

[連絡先]電話0952-45-2141	
[区分]九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)	
[分類]技術・普及	

[背景・ねらい]
昨今、施肥の効率化や省力化を兼ね備えた栽培技術としてかん水施肥栽培が注目されている。これまで、かん水施肥栽培における給液管理は、火山灰土壌を中心に知見が集積されているが、本県平坦部のような地下水位が高く、重粘質で肥沃な鉱質土壌においては、その特徴にあった給液管理技術の確立が必要である。そこで、本県の主要切り花の一つであるカーネーションを用い、かん水施肥栽培における給液管理について検討する。

[成果の内容・特徴]
  1. 給液モデルは、定植から活着まではかん水のみとし、活着後からの栄養生長期間は徐々に窒素施肥量を増やし、1番花の採花終了(2〜3月)以降、施用量を少なくする。また、かん水量は、活着後、初秋期(10月)までは徐々に増加し、秋季から冬季(11〜1月)はやや減少させ、その後、気温の上昇に伴い増加する設定である(表1)。

  2. 本給液モデルは、日かん水量を3〜4回に分けて施用し、肥料は初回施用時に日全量を投入する。かん水量は気象や圃場条件によっても異なるので、pF1.8〜2.0を目安に調節する(表1)。

  3. 収量(切り花本数)は、窒素施肥量23〜28kg/10aでは減少し、形質面でも主に切り花重が低下するが、窒素施肥量37〜41kg/10aでは慣行施肥栽培と同等の収量・形質が得られる(表2)。

  4. かん水量は、慣行施肥栽培におけるかん水量の20〜30%減水にあたる500〜600t/10aまでは、収量や形質への影響は認められない(表2表3)。

  5. 土壌中の硝酸態窒素濃度は、慣行施肥栽培に対し、窒素施肥量23kg/10aでは無肥料に近い濃度であり、汁液中の硝酸イオン濃度も明らかに低下するが、窒素施肥量37kg/10aでは、汁液中の硝酸イオン濃度は慣行施肥栽培と同水準で経過し、窒素の肥効は確保される(図1)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 有明海沿岸部重粘土地帯におけるカーネーションのかん水施肥栽培に活用できる。

  2. 土壌型は細粒灰色低地土で、可給態窒素5mg/100g以上の土壌に適応する。

  3. 土壌からの養分吸収が多いので、土づくり等地力の維持に努める。

[具体的データ]

表1 重粘土地帯でのカーネーションのかん水施肥栽培における給液モデル


表2 窒素施肥量の違いと収量および形質


表3 かん水量の違いと収量および形質(2000年)


図1 窒素施肥量の違いが土壌および植物体中窒素濃度に及ぼす影響(品種:ノラセレクト)

[その他]
研究課題名:花き栽培における土壌および植物体養分のリアルタイム簡易診断技術の確立
予算区分 :国庫(土壌保全)
研究期間 :2000〜2004年度


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