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イチゴ高設栽培における被覆燐硝安加里および液肥を用いた窒素施肥法


[要約]
イチゴ高設栽培において、被覆燐硝安加里と液肥を用いた窒素肥料の分施により、土耕栽培並の収量水準を確保できる。その際の窒素施肥量は39kgN/10a程度が適当であり、最適窒素吸収量は「さがほのか」、「とよのか」ともに約23kgN/10aである。「さがほのか」では、1月以降、窒素吸収量は直線的に増加する。

[キーワード]
イチゴ、さがほのか、とよのか、高設栽培、被覆燐硝安加里、窒素吸収量

[担当]
佐賀農業セ・土壌環境部・土壌・肥料研究担当

[連絡先]電話0952-45-2141	
[区分]九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)	
[分類]技術・普及	

[背景・ねらい]
イチゴの高設栽培は、労働強度の軽減に有効なことから、本県でも栽培面積は増加傾向にある。しかし、土耕栽培と比較して、有機質素材を配合した培地での栽培のため、培地の緩衝能は小さく、土壌のような地力からの養分供給は期待できない。よって、イチゴの窒素吸収に即した過不足のない肥効が必要となる。そこで、被覆燐硝安加里と水溶性複合肥料の液肥を用い、これまでの土耕栽培における分施体系に準じた施肥方法を検討した。

[成果の内容・特徴]
  1. 基肥に被覆燐硝安加里(成分%N:P2O5:K2O=14:12:14)リニア型140日タイプ、シグモイド型180日タイプ、追肥(マルチ時期)にリニア型140日タイプを重量比1:1:1で施用し、さらに水溶性複合肥料を用いた根付け肥の施用と生育半ば(12月以降)からの液肥による追肥により、生育期間全般にほぼ均等な窒素溶出パターンとなる(図1)。

  2. 本分施体系における窒素施肥量は、「さがほのか」、「とよのか」とも39kgN/10a程度が適当である。窒素施肥量30kgN/10aでは、両品種とも1月以降の減収により総収量は減収し、特に「さがほのか」においては顕著である。また、多肥(48kgN/10a)による増収効果は無く、根付け肥を施用しない場合は年内から減収傾向にある(表1)。

  3. 窒素吸収パターンは収量パターンを反映し、特に「さがほのか」では、1月以降の収量増加に伴う窒素吸収量の増大により、施肥量30kgN/10aでは窒素吸収は鈍化し、減収する。収量性および窒素吸収経過からみた最適窒素吸収量は、「さがほのか」、「とよのか」の両品種とも約23kgN/10aである(図2図3表1)。

  4. 「さがほのか」では、年内の窒素吸収量が7kg/10a程度と「とよのか」に比べ少ないが、「とよのか」が1〜2月に窒素吸収量がやや停滞気味に推移するのに対し、「さがほのか」では、1月以降、直線的に増加する(図2図3)。

[成果の活用面・留意点]
  1. イチゴ高設栽培における「さがほのか」、「とよのか」の促成栽培に活用できる。

  2. 培地内に温湯管を埋設し、低温期は培地温摂氏15〜18度を確保する。

  3. 使用培地の組成(容量%)は、日向ボラ土:赤玉土:バーク堆肥:ピートモス:ヤシピート:木炭=35:15:10:25:10:5であり、培地量を3.4〜5.6L/株とする。

  4. 過剰なかん水は施肥成分の流亡が多くなり培地内の肥効にも影響するため、排水率10〜20%を目安に100〜200ml/株/日を季節に応じてかん水する。

[具体的データ]

図1 供試施肥体系における窒素溶出パターン(N39kg区)


表1 供試施肥体系における窒素施肥量の違いと商品果収量


図2 窒素施肥量の違いと「さがほのか」の窒素吸収


図3 窒素施肥量の違いと「とよのか」の窒素吸収

[その他]
研究課題名:イチゴ新品種「さがほのか」の特性を活かした育苗法の開発と新栽培管理技術の確立
予算区分 :県単
研究期間 :2000〜2002年度


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