諫早湾干拓地における緑肥と堆肥の連用による早期土壌改良法
- [要約]
- 造成された諫早湾干拓地では、緑肥のすき込みと牛ふん堆肥2t/10aを2年連用すると、全炭素、可給態窒素が露地野菜畑の改善目標値まで改善し、冬キャベツでは目標収量5,600kg/10a程度の収量が得られる。またバーク堆肥2t/10a、同4t/10a、好塩菌堆肥2t/10aを3年連用しても同様の改善効果がある。
- [キーワード]
- 諫早湾干拓、緑肥、堆肥、土壌改良、可給態窒素、可給態リン酸、冬キャベツ
- [担当]
- 長崎県総合農林試験場・企画経営部・干拓科
[連絡先]電話0957-35-1272
[区分]九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)
[分類]技術・普及
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[背景・ねらい]
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新たに造成された諫早湾干拓地は有明海の海底土(通称「ガタ土」)を母材とする海成沖積土であり、粘土含量が高い強粘質土壌である。そのため、保肥力が大きく、各種養分に富むが、耕うん性、排水性、塩素濃度、地力窒素等の改善が必要であり、ほ場造成後に緑肥作物を2年4作すると土壌理化学性が改善することを明らかにした(平成15年度九州沖縄農業研究成果情報)。
策定された諫早湾干拓の営農計画では、営農モデルとして露地野菜が中心であり、入植初期の経営を安定させるため、環境保全型農業が展開できる露地野菜畑への早急な土壌改良が必要である。そこで、緑肥のすき込みと長崎県内で利用可能な牛ふん堆肥、バーク堆肥、好塩微生物発酵バーク堆肥(以下、好塩菌堆肥)を年1回2t/10aまたは4t/10aの連用を組合せて、早期に地力窒素と物理性を改善し、露地野菜の生産安定化を図る土壌改良法を確立する。
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[成果の内容・特徴]
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供試した堆肥の全窒素含量は牛ふん堆肥、バーク堆肥、好塩菌堆肥の順に高く、C/N比はバーク堆肥が21と最も高い。また全リン酸及び全カリウム含量は牛ふん堆肥、好塩菌堆肥、バーク堆肥の順に高い(表1)。
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造成ほ場に緑肥のすき込みと牛ふん堆肥2t/10a、同4t/10a、バーク堆肥4t/10a及び好塩菌堆肥4t/10aを2年連用すると、全炭素、可給態窒素が改善目標値(長崎県土壌診断基準及び地力増進基本指針)まで改善し、pF1.5の気相率も維持できる。バーク堆肥2t/10a及び好塩菌堆肥2t/10aでは3年連用により同様の改善効果が認められる(表2)。
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土壌中の可給態リン酸は、牛ふん堆肥4t/10a及び好塩菌堆肥4t/10aの2年連用で100mg/乾土100g以上にまで蓄積する。交換性カリウムは作付が進むにつれ減少するが、牛ふん堆肥4t/10aの連用では減少量が少ない(表2)。
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2年連用後の冬キャベツでは、バーク堆肥4t/10a施用を除き長崎県基準技術目標収量(5600kg/10a)並の収量が得られる。3年連用後の収量はいずれも目標収量以上となる(表3)。
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冬キャベツ生育期間中の堆肥の分解特性(埋設法)から、牛ふん堆肥は炭素及び窒素の分解が順調に行われ、施用後速やかな無機態窒素の放出が期待できるが、バーク堆肥及び好塩菌堆肥は窒素分解率が低く、分解に時間を要する(図1)。
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[成果の活用面・留意点]
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諫早湾干拓地の造成後約3年以内のほ場に適応できる。
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「諫早湾干拓初期営農指針」策定に活用する。
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[具体的データ]
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表1 堆肥の化学成分(乾物あたり)

表2 作土の理化学性の推移(乾土あたり)

表3 緑肥及び冬キャベツの収量(kg/10a)

図1 諫早湾干拓土における堆肥の分解特性
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[その他]
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研究課題名:諫早湾干拓営農対策試験土づくり対策試験
予算区分 :県単(一部国庫委託調査)
研究期間 :2000年度〜
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