福岡県内全域の施設野菜ほ場における塩類集積の実態とその対策
- [要約]
- 施設栽培の青ネギ、イチゴ等では堆肥を施用する農家が多い。また、硝酸態窒素含量や可給態リン酸含量は施設野菜の改善目標値の上限を上回り、次層においても多量の塩類集積がみられることから施肥量を適宜減らす必要がある。
- [キーワード]
- 施設野菜、青ネギ、イチゴ、堆肥、塩類集積
- [担当]
- 福岡農総試・土壌・環境部
[連絡先]電話092-924-2939
[区分]九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
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施設野菜ほ場では、化学肥料や堆肥の多施用による養分集積や塩類障害が問題になっている。また、農耕地に集積した硝酸態窒素やリン酸による水質汚染も懸念されている。これらの問題を解決するためには施肥改善対策が必要であるが、これまでの土壌調査結果では同一作物における地域間差や施設ほ場の下層土における現状を報告した事例は多くない。
そこで、施設野菜ほ場の県内全域における肥培管理および下層までの塩類集積実態を明らかにし施肥改善に寄与するとともに環境保全型施肥のための指導資料とする。
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[成果の内容・特徴]
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堆肥を施用する農家は多く、調査農家全体の約75%を占める。特に、青ネギではすべての農家で堆肥を施用し、その平均は約8t/10aである。石灰質資材の施用は調査農家の50%に満たない(表1)。施用堆肥の種類は青ネギは牛ふん堆肥、イチゴは牛ふん堆肥およびバーク堆肥である。
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イチゴ全体では約70%の農家が堆肥を施用し、施用量は平均値が約4t/10aである(表1)。また、カリ肥料の施用量に地域間差がみられるが(表1)、B地域の土壌はスメクタイト系粘土鉱物が主体であり陽イオン交換容量が大きく作土層への交換性カリ集積量が多いため施用量が少ない(表2、一部データ略)。
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腐植含量は多くのほ場で改善目標値に達しているが、pHやECは改善目標値をはずれる割合が高い(表2、表3)。
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作土層の硝酸態窒素や可給態リン酸は改善目標値の上限を上回るほ場割合が高く、特に青ネギでは全てのほ場で上回っている。また、イチゴでは硝酸態窒素集積量に地域間差があり、B地域に比べて15mg/100g以上多いA地域はさらに施肥窒素量を削減できる可能性がある(表2、表3)。
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可給態リン酸や交換性カリの集積は、青ネギ、コマツナでは主に作土層にみられ、イチゴでは次層にもみられる(表2)。硝酸態窒素は青ネギ、コマツナでは次層まで多い。青ネギ、コマツナは年3作以上の周年栽培であり年間施肥量が多く(表1)、また陽熱消毒による湛水期間も短いために作土層からの硝酸態窒素以外の養分移行が少ない。
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[成果の活用面・留意点]
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施設野菜栽培の施肥改善と環境保全型施肥技術のための基礎資料として活用できる。
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施設野菜では可給態リン酸や交換性カリの集積量が多いので、作付け前に土壌診断を実施してリン酸およびカリ施肥量を適宜減らす必要がある。
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硝酸態窒素が次層まで高く地下水への溶脱が懸念される。
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[具体的データ]
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表1 土壌の管理実態(平均値±標準偏差;s/10a)

表2 施設土壌の化学性

表3 作土の化学性において改善目標値に達しないほ場割合(%)
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[その他]
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研究課題名:土壌管理の相違が土壌理化学性に及ぼす影響の解明
予算区分 :助成試験(土壌保全)
研究期間 :1999〜2002年度
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