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水稲栽培における被覆尿素の肥効特性に及ぼす土壌要因の影響


[要約]
水稲「ヒノヒカリ」の移植栽培において被覆尿素(リニア型100日タイプ)を全量基肥施用したとき、水稲の施肥窒素吸収量は、気象変動、有機物(牛ふん堆肥)施用、水管理および地力による影響を受け難い。総窒素吸収量は地力の大小でほぼ決まり、減肥しても施肥窒素の利用率は一定である。

[キーワード]
水稲、被覆尿素、有機物、水管理、地力、気象変動

[担当]
大分農技セ・化学部

[連絡先]電話0978-37-1141	
[区分]九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)	
[分類]技術・参考	

[背景・ねらい]
被覆肥料を使った全量基肥栽培が普及しているが、有機物の積極的な利用促進が進められる中で、有機物(牛ふん堆肥、麦わら)施用の有無、気象要因、水管理や圃場の地力差によって被覆肥料の肥効も異なることが予想される。このため、土壌、環境要因と肥効との関係について検討する。

[成果の内容・特徴]
  1. 試験期間中の水稲の生育は、2001年(畑より転換)は乾土効果と高温条件によりわら、籾重ともに多く、2002年は高温少雨と台風によりもみ重が少なく、2003年は期間を通じて降雨が多く生育前半が過去2年間より低温で推移し籾/わら比が高い。籾重で見ると有機物施用の効果は2年目から、間断潅水の効果は初年度から見られる(表1)。

  2. 有機物(牛ふん堆肥)施用の有無は、わら、籾の施肥窒素吸収量に影響を与えない。わらの施肥窒素吸収量は1.5kg/10aで毎年一定である。籾への施肥窒素吸収量は2.5〜3.1kg/10aと年次間差はあるが、同一年で見ると有機物施用の有無による収量差に影響されない。土壌由来の窒素吸収量は有機物施用の有無に大きく影響される(図1)。

  3. 水管理(間断潅水と常時湛水)は、わら、籾への施肥窒素の吸収量に影響を与えない(図2)。

  4. 地力の違いは、わら、籾が吸収する施肥窒素の利用率に影響を与えない。わらへの施肥窒素の吸収量は施肥量を減らすと減少するが、地力差に影響されない。籾への施肥窒素の吸収量は地力差をある程度反映するが、土壌由来の窒素吸収量が地力の違いにより大きく変動するのに比べて影響が少ない(図3)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 本試験は平坦地、細粒黄色土の圃場に埋設した鉄枠に重窒素標識・被覆尿素肥料(リニア型100日タイプ)を施用して実施した。

  2. 間断潅水の効果は年次変動により差があるものの、有機物(牛ふん堆肥)等の施用では必要な技術である。地力診断により土壌由来の窒素発現量を把握することが重要である。

[具体的データ]

表1 有機物施用、間断潅水の有無と収穫期の乾物重の推移


図1 有機物施用と被覆尿素(LP100)の肥効


図2 水管理と被覆尿素(LP100)の肥効


図3 地力と被覆尿素(LP100)の肥効(2002年)

[その他]
研究課題名:環境保全型土壌管理のための現地体系化支援
予算区分 :県単
研究期間 :2001〜2003年度


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