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水田転作作物栽培によるかんがい水中硝酸態窒素浄化能


[要約]
高濃度の硝酸態窒素(10mgL-1)を含むかんがい水で飼料稲を栽培した場合、かんがい水から供給された窒素のうち、80%程度が作物吸収および脱窒で浄化される。一方、畦間かんがいによるサトイモ栽培では脱窒は少ないが、作物吸収が60%程度認められる。
[キーワード]
イネ、飼料イネ、サトイモ、硝酸態窒素、水田転作、窒素浄化能

[担当]
鹿児島農試・土壌肥料部

[連絡先]電話099-268-3231	
[区分]九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)	
[分類]行政・普及	

[背景・ねらい]
近年、農業系およびその他の要因によって、河川水の硝酸汚染が進行している。一方、水稲は湛水という特殊な栽培条件であることから、脱窒などの多面的機能を有しているが、昨今のコメ事情によって、水稲栽培面積は減少している。このため、かんがい水を積極的に利用して栽培される水田転作作物の窒素浄化能を評価することによって、水田の環境浄化機能を維持していく必要がある。

[成果の内容・特徴]
  1. 飼料イネの場合、硝酸態窒素濃度10mgL-1のかんがい水から供給された窒素のうち、20%が稲体に吸収され、その7割以上が稲わらに蓄積される。また、60%が脱窒するため、窒素浄化能は両者の合計で80%と積算される(図1)。

  2. 畦間かんがい法を利用した水田作サトイモの場合、硝酸態窒素濃度10mgL-1のかんがい水から供給された窒素のうち、59%が植物体に吸収され、その7割以上がイモに蓄積される。また、脱窒は8%程度で少なく、窒素浄化能は両者の合計で67%と積算される(図2)。

  3. 水稲栽培の場合、硝酸態窒素濃度10mgL-1のかんがい水から供給された窒素のうち、27%が稲体に吸収され、その7割以上がもみに転流する。また、57%が脱窒するため、窒素浄化能は両者の合計で84%と積算される(図3)。

  4. 水田は水稲栽培だけでなく、飼料イネやサトイモのように、かんがい水を積極的に利用した転作作物を栽培することによっても高い窒素浄化能が発揮される。

[成果の活用面・留意点]
  1. かんがい水中硝酸態窒素濃度が高い地域において、かんがい水の窒素浄化をはじめとする水田の多面的機能を活かした総合利用計画策定の資料として活用できる。

  2. 本試験は、重窒素トレーサー法を用いた1m2規模のモデル試験結果である。
  3. 本試験の供試土壌条件は中粗粒灰色低地土で、供試品種は水稲がヒノヒカリ、飼料イネがモーれつ、サトイモが大野芋である。

[具体的データ]

図1 飼料イネ栽培におけるかんがい水由来窒素の収支


図2 水田作サトイモ栽培におけるかんがい水由来窒素の収支


図3 水稲栽培におけるかんがい水由来窒素の収支

[その他]
研究課題名:中山間水田の積極的利用による周辺水の環境修復技術確立
予算区分 :県単
研究期間 :2000〜2004年度


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