南九州畑作地域における大規模露地野菜生産法人の発展ステップ
- [要約]
- 南九州畑作地域における露地野菜生産法人の経営の成長には、3つの発展ステップがある。ステップ1は生産への集中、ステップ2は販売方法の変革、ステップ3は経営資源の有効利用である。ステップに応じて有効な支援方策は異なる。
- [キーワード]
- 南九州畑作地域、露地野菜生産法人、発展ステップ、支援方策
- [担当]
- 九州沖縄農研・総合研究部・動向解析研究室
[連絡先]電話096-242-7694
[区分]九州沖縄農業・農業経営
[分類]行政・参考
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[背景・ねらい]
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南九州畑作地域における露地野菜生産は、甘しょからの作物転換を進めることで成立してきた。こうしたなか露地野菜の大規模農家は着実に増加し、予測では2010年には、野菜作付面積5ha以上の農家数は150戸、作付面積シェアは20%に達する。大規模化の進展の最先端に、少数ではあるが借地と労働力雇用で急速に成長を図る露地野菜生産法人が出現している。露地野菜生産法人は産地の牽引車の役割を果たしており、その育成は重要となっている。そこで露地野菜生産法人の経営の発展ステップを明らかにし、発展ステップに対応した支援方策を示す。
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[成果の内容・特徴]
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表1に露地野菜生産法人の特徴を示す。露地野菜生産法人は、経営耕地の拡大を借地に依存し、経営収支安定化のため契約生産のウェートが高い。販売方法は、JA等への出荷により販売を外部化する方法、販路の開拓により契約生産を行う方法、大量生産と多様な商品アイテムにより広範な契約生産を行う方法がある。
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露地野菜生産法人の発展ステップを、ファームサイズ(経営耕地面積規模)とビジネスサイズ(販売額規模)の視点から捉えることができる。ステップ1は生産への集中、ステップ2は販売方法の変革、ステップ3は経営資源の有効利用と整理できる(図1)。
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ステップ1の生産への集中(A農園)は、販売を外部化し借地を活用した規模拡大により行われる。
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ステップ2の販売方法の変革(B農園)は、取引先の開拓による直接契約や加工部門の導入により経営を多角化することである。
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ステップ3の経営資源の有効利用(C農園)は、雇用労働力の増加や一層の規模拡大等、増加した経営資源を、契約生産による作物の多品目化と取引先の増加による多チャンネル化により有効に利用することである。
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露地野菜生産法人の支援方策はステップにより異なる(表2)。ステップ1では、農地の流動化支援であり、自治体による農地情報の提供や貸し手、借り手への助成金支払いが有効である。ステップ2では、ステップ1の支援方策に加えて、取引先が要求する品質へ対応するための栽培技術支援や加工部門施設整備等ハード面への補助や融資が有効である。ステップ3では、ステップ1、2の支援に加えて、経営活動に対するコンサルティングや取引先拡大のためのネットワーク作りへの支援が有効である。
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[成果の活用面・留意点]
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自治体の農政担当者等が露地野菜生産法人を育成する際の参考情報として活用できる。
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[具体的データ]
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表1 露地野菜生産法人の経営概況

図1 露地野菜生産法人の発展ステップ

表2 ステップ別の支援方策
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[その他]
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研究課題名:南九州畑作地域における農業構造の動向解析による主要な担い手の解明
課題ID:07-01-01-*-01-04
予算区分 :暖地畑輪作
研究期間 :2001〜2004年度
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