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紫サツマイモ「アヤムラサキ」アントシアニンの体内吸収性と生理作用


[要約]
ラットに経口投与された紫サツマイモ由来アシル化アントシアニンは、投与後30分〜2時間血中に存在する。その存在中に、血液流動性は改善され、収縮期血圧は低下する。長期給餌試験でも給餌期間中は収縮期血圧低下が認められる。

[キーワード]
紫サツマイモ、アントシアニン、血液流動性、血圧降下作用

[担当]
九州沖縄農研・作物機能開発部・食品機能開発研究室

[連絡先]電話096-242-7873	
[区分]九州沖縄農業・流通加工、作物・夏畑作物、食品	
[分類]科学・参考	

[背景・ねらい]
アシル化アントシアニン(糖部に有機酸が結合したアントシアニン)を含む紫サツマイモ「アヤムラサキ」から作ったジュースは、ヒトボランティア試験において、血圧降下作用や肝機能改善効果などの機能性を発現するが、その関与成分およびメカニズムは十分に解明されていない。そこで「アヤムラサキ」から紫サツマイモアントシアニン含有物(PSP-ANT)を調製し、実験動物を用いて、含まれているアントシアニンの体内吸収性および発現される生理作用を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
  1. 「アヤムラサキ」から調製した紫サツマイモアントシアニン含有物(PSP-ANT)をラットに経口投与すると、血中にアントシアニンが検出される(図1)。紫サツマイモに含まれているアシル化アントシアニンは体内吸収されることを示す。

  2. ラット血中に存在するアントシアニンの中で濃度の高いのはYGM-5b(peonidin3-caffeoylsophoroside-5-glucoside、分子量949)である(図1)。PSP-ANT投与30分後に最高レベルに到達し、2時間後までは血中に存在する。

  3. ラットにストレス(断水、断食、固定器にて拘束)を2回加えると血液流動性を悪化させることができる(図2)。このモデルラットに、血液流動性の測定1時間前にPSP-ANTを経口投与しておくと、血液流動性は改善する(値が平常値近くまで戻り、血液がサラサラになる)(図2)。

  4. PSP-ANTを単回経口投与すると、高血圧自然発症ラットの収縮期血圧は低下する(図3)。その降圧作用は投与2時間後には現れ、8時間後でも持続している。

  5. PSP-ANTの血圧降下作用は、PSP-ANTを0.1%あるいは0.2%混合した食餌を用いた長期給餌でも観察される(図4)。PSP-ANTの給餌を中断すると、血圧はコントロール群と同レベルになる。

[成果の活用面・留意点]
  1. 本成果は、紫サツマイモに含まれるアントシアニンについて明らかにされた機能性であり、他の作物のアントシアニン類(約400種存在)でも同様な機能があるとは保証していない。

  2. PSP-ANT調製物の特性:「アヤムラサキ」を摂氏90度10分加熱(アシル化されているアントシアニンであるため熱安定性が高い)、マスコロイダー等で磨砕、複合酵素処理、Diaion HP-20カラムでの溶出、減圧濃縮処理等を施し調製。アントシアニン含量は124.4mg-YGM-5b相当量/gで、その90.0%が8種の主要アントシアニンで占められている。なお原料イモのアントシアニン含量は4.2mg-YGM-5b相当量/gである。

[具体的データ]

図1 PSP-ANT(投与液)および経口投与30分後にラット血漿に検出されるアントシアニンのHPLCクロマトグラム


図2 PSP-ANT経口投与によるストレス負荷ラットの血液流動性の改善作用


図3 PSP-ANT単回経口投与による高血圧自然発症ラットの収縮期血圧の変化


図4 PSP-ANT長期給餌による高血圧自然発症ラットの収縮期血圧の変化

[その他]
研究課題名:和食素材に含まれるアントシアニンの体内吸収と機能性発現の解明
課題ID:07-07-01-*-19-04
予算区分 :食品総合
研究期間 :2002〜2004年度


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