赤肉で油加工適性を有する暖地向けばれいしょ新品種候補系統「西海31号」
- [要約]
- ばれいしょ「西海31号」は赤肉でアントシアニンを含み、でん粉価が高くポテトチップなどの油加工適性を持つ暖地二期作栽培向けの系統である。
- [キーワード]
- ジャガイモ、アントシアニン、油加工適性、暖地二期作、高でん粉
- [担当]
- 長崎県総農林試・愛野馬鈴薯支場・育種栽培科
[代表連絡先]電話0957-36-0043
[区分]九州沖縄農業・畑作、作物・夏畑作物
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
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国産ばれいしょの需要拡大のために、機能性が期待されるアントシアニンを含み、赤い肉色の品種が北海道農業研究センターで育成され加工原料用として利用されているが、北海道などの一期作産のばれいしょだけでは6月から8月にかけて原料の供給ができない。そこで、暖地二期作栽培に適した赤肉ばれいしょ品種を育成し、一期作産と組み合わせた周年供給を可能とする。
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[成果の内容・特徴]
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「西海31号」は高でん粉で目が浅い「96016-8」を母、赤皮・赤肉の「長系115号」を父として、1999年秋作で交配を行い選抜・育成してきた系統である。
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アントシアニン色素を含有し(表1)、肉色は均一な赤色である(写真1)。
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ポテトチップは標準の「トヨシロ」に比べ食感がやや堅いが、適性判定は同程度であり(表3)、揚げ上がりの色が均一で外観が優れる(写真1)。
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でん粉価は春作で「デジマ」、「ニシユタカ」より3%程度高く(表1)、秋作でも「デジマ」より2%程度高い。
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出芽は「デジマ」より春作で6日、秋作で2日早く初期生育に優れ、早晩性は「デジマ」より早い、中早生である(表1)。
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株当たりのいも数は「デジマ」より多く、平均1個重は小さい。春作の収量は「デジマ」並であるが、秋作の収量は「デジマ」より劣る。(表1)。
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ジャガイモYウイルスにはやや強から中の抵抗性を示すが、そうか病、疫病は「デジマ」並に弱く、青枯病にも弱い(表2)。
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[成果の活用面・留意点]
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一期作産の端境期となる6月から8月にかけての加工原料用として現地での栽培および収益性の検討を行う。
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需要の拡大を図るために、実需者と協力してポテトチップ以外の加工品の開発を図る必要がある。
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ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持たないため(表2)、発生地域での栽培を避ける。そうか病、青枯病、疫病に弱いので「デジマ」並の防除を行う。
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[具体的データ]
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表1 ばれいしょ「西海31号」の特性概要

表2 病害虫抵抗性試験結果

表3 ポテトチップ適性試験結果

写真1 西海31号の塊茎およびポテトチップ
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[その他]
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研究課題名:暖地有色ジャガイモ品種の育成、ばれいしょの新品種育成、
予算区分 :ブラニチ6系、指定試験
研究期間 :1999〜2005年度
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