牛群検定データからみた福岡県における乳用牛改良の現状
- [要約]
- 福岡県の検定牛における乳量EBV(推定育種価)は向上し続けているが、乳脂肪率EBVは、1995年生まれまでは上昇しその後低下する傾向にある。また、無脂固形分率および乳蛋白質率の年当たり改良量は低下傾向にある。
- [キーワード]
- 乳用牛、EBV、年次的変化、改良方向、乳成分
- [担当]
- 福岡農総試・家畜部・乳牛チーム
[代表連絡先]電話092-925-5231
[区分]九州沖縄農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
- 乳牛の育種計画においては、産乳能力の遺伝的改良状況を把握した上で、改良目標を設定することが重要である。我が国では、1992年から牛群検定および後代検定においてBLUP法アニマルモデルによる全国統一雌雄同時評価が始まり、同時期に発表されたEBV(Estimated
Breeding Value:推定育種価)であれば単純に遺伝的能力を比較することが出来る。現在、EBVは家畜改良センターにおいて毎年計算され、その時点での雌牛の生年別年次変化は求められているが、北海道と都府県平均の公表に限られている。このため、特定の地域において経時的な遺伝的改良状況を把握するためには、独自の調査・分析を必要とする。そこで、福岡県(以下、本県)のホルスタイン雌牛集団における遺伝的能力の年次的変化を求め、北海道および都府県平均と比較・検討し、乳用牛改良の現状を明らかにする。
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[成果の内容・特徴]
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本県の乳量に関する遺伝的能力(乳量EBV)は、都府県平均よりも高く、北海道と同程度で向上し続けている(図1)。
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乳脂肪率EBVは、本県、北海道および都府県平均ともに、1995年以降に生まれた検定牛では低下している(図2)。
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無脂固形分率EBVは、本県、北海道および都府県平均ともに、低下傾向にある(図3)。乳蛋白質率EBVは、本県、北海道および都府県平均ともに、1997年生まれまでの低下傾向が緩和されつつある(図4)。
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泌乳形質の改良は乳量重視で進んでおり、都府県平均の改良量の伸びが大きい(表1)。
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[成果の活用面・留意点]
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牛群検定参加農家における種雄牛選定の参考として利用できる。
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後継牛生産用雌牛として確保する際の判断材料として利用できる。
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福岡県家畜改良増殖計画策定の参考とする。
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[具体的データ]

図1 乳量(kg)EBVの年次的変化図2 乳脂肪率(%)EBVの年次的変化
図3 無脂固形分率(%)EBVの年次的変化
図4 乳蛋白質率(%)EBVの年次的変化

表1 泌乳形質における年当たりの改良量
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[その他]
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研究課題名:県情報分析センターの運営管理
予算区分 :助成事業(生産振興総合対策)
研究期間 :1990年度〜
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