豚凍結精液を用いた定時1回人工授精技術
- [要約]
- 性腺刺激ホルモンを投与して発情を誘起した雌豚にhCGを投与して、40時間後に凍結精液の人工授精(注入精子数25億)を行うと、活力が良好な精液を用いた場合、高い受胎率が得られる。
- [キーワード]
- 豚凍結精液、人工授精、定時1回AI
- [担当]
- 福岡農総試・家畜部・養豚チーム
[代表連絡先]電話092-925-5232
[区分]九州沖縄農業・畜産草地(豚・鶏・畜産環境)
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
- 豚凍結精液を用いた人工授精(AI)では、精子の生存時間が短いため、排卵直前が授精適期とされているが、排卵時間を予測するのは困難である。したがって、2回以上のAIが推奨されているものの、授精適期から外れることが多いため、受胎率低下の要因の一つと考えられている。
近年、性腺刺激ホルモンを投与することで、排卵時間を限定できることが明らかとなっている。そこで、排卵直前と思われる時間に定時AIを行うとともに、受胎率向上技術(平成16年度成果)とを組み合わせてAIを行い、本技術の実用性を検討する。
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[成果の内容・特徴]
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定時AIプログラムは、De Rensisらの手法を参考に、ウマ絨毛性性腺刺激ホルモン(eCG)400単位とヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)200単位との合剤を投与し、72時間後にhCG500単位投与、さらに40時間後にAIを1回行うものである。処理を行うことにより、93%と高率に発情が誘起される(表1)。
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融解後の活力が高い精液を用いてAIすると、受胎率は92%と良好な結果が得られる(図1、表2)。また、1発情当たりの総注入精子数は25億であり、従来法(注入精子数50億×2回)に比べて75%削減できる。
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[成果の活用面・留意点]
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液状精液においても使用可能な技術である。
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中活力精液(図1参照)を用いてAIすると、受胎率が低下する。
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定時AIをする場合には、ホルモン処置が必要であるため、獣医師に依頼し、その指示に従う。なお、ホルモン代として800円程度(当場納入価格)が必要である。
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[具体的データ]
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表1 性腺刺激ホルモン投与後の雌豚の発情誘起率

図1 AI供試凍結精液(表2)における融解後の経時的な活力

表2 定時1回AI後の繁殖成績
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[その他]
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研究課題名:超少量注入法による豚凍結精液実用化技術の確立
予算区分 :法人等受託(伊藤記念財団)
研究期間 :2004〜2006年度
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