TDR方式の水分計による飼料イネサイレージの迅速な乾物率測定
- [要約]
- 飼料イネロールベールサイレージの乾物率はTDR方式の水分計を用いて測定が可能である。測定は上・中・下部の3点の平均値を取ることで、乾物率が20%から60%の範囲において、誤差3.5%程度の精度で測定できる。
- [キーワード]
- 飼料イネ、サイレージ、粗飼料
- [担当]
- 九州沖縄農研・畜産飼料作研究部・飼料生産研究室
[代表連絡先]電話096-242-7756
[区分]九州沖縄農業・畜産・草地(草地飼料作)、畜産草地
[分類]技術・参考
-
[背景・ねらい]
- 水田機能の保持と水田を利用した自給飼料生産の拡大に向けて、飼料イネの栽培・生産が全国的に拡大・増加しつつある。今後、飼料イネの流通を図るためには現場において、ロールベールの乾物重量を現場で迅速に測定する必要がある。また、給与場面においても乾物率を把握することは給与量設定には重要である。
TDR方式の水分計は、「電磁波の伝播速度=光速/(誘電率)0.5」の関係があり、物質中の電磁波の伝播速度がその物質の水分量に大きく依存することを利用した水分計測器で、土壌や堆肥などの水分測定に用いられている。測定方法も2本のステンレスロッドを突き刺すだけと簡易、迅速である。そこで、TDR方式の水分計による、飼料イネロールベールサイレージ乾物率の迅速測定法を開発する。
-
[成果の内容・特徴]
-
- TDR方式で測定した誘電率0.5は詰込み密度に影響を受けるものの、飼料イネサイレージの乾物率と高い相関を有し、「乾物率(%)=1.0866×誘電率-17.564×(誘電率)0.5+90.99」の回帰式が得られる。また、発酵産物を水洗して除したものも通常の飼料イネサイレージとほぼ同様の推移を示すことから、発酵産物の影響は少ない(図1)。
-
上記の式を用いて飼料イネロールベールサイレージの乾物率を測定する場合、測定部位として、上部、中部および下部の平均をとることで、より推定精度が高まる(図2)。
-
誘電率に影響を及ぼす可能性がある乾物率、V-SCOREおよび収穫機の違いは誘電率の推定誤差に影響を及ぼさず、その推定誤差の絶対平均値は3.5%である(表1)。
-
[成果の活用面・留意点]
-
-
飼料イネサイレージの給与量計算や取引における乾物量の計算に利用できる。
-
測定原理上、梱包されたロールベールサイレージが対象となる。また、ロールベールサイレージの乾物率は、表面部と中心部では異なるので、測定にはロール半径程度以上のロッドを用いる必要がある。
-
本試験は中型(φ100cm×H100cm)およびフレール型(φ90cm×H90cm)での測定結果である
-
[具体的データ]
-

図1 飼料イネサイレージの乾物率と誘電率0.5の関係

図2 飼料イネロールベールサイレージにおける実測値と推定値の関係

表1 飼料イネのロールベールサイレージ諸条件と推定誤差の関係
-
[その他]
-
研究課題名:飼料イネの非破壊品質評価および栄養価推定法の開発
課題ID:07-02-02-*-17-05
予算区分 :ブラニチ3系
研究期間 :2003〜2005年度
目次へ戻る