乳牛の蹄病発生に関与する血中ビオチン濃度の血液生化学成分による推定法
- [要約]
- 血中ビオチン濃度が低い牛群は蹄病が多く、特に蹄底出血・潰瘍になる危険性が高い。この血中ビオチン濃度は、泌乳初期の血液生化学成分BUN、NEFA、Ca/Pと相関があり、これらの測定値によって血中濃度を把握することができる。
- [キーワード]
- 乳牛、蹄病、ビオチン
- [担当]
- 福岡農総試・畜産環境部・環境衛生チーム
[代表連絡先]電話092-925-5177
[区分]九州沖縄農業・畜産・草地
[分類]科学・参考
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[背景・ねらい]
- ビオチンはビタミンB群に属する水溶性ビタミンで、蹄を作る細胞(真皮乳頭胚芽層)が合成するケラチン繊維のつながり(ジスルフィド結合)を強化し、良質な蹄を作るために重要な働きをする物質である。
牛はビオチンをルーメン内微生物で合成するため不足しないと考えられてきたが、近年は蹄病と血液中のビオチン不足との関係が注目されている。しかし、ビオチンの測定は難しい操作を要するので日常の家畜診療や代謝プロファイル診断における血液検査などでは実施されていない。そこで、乳牛の血中ビオチン濃度と蹄病の発生状況および代謝プロファイル診断などで測定する血液生化学成分との関係を検討する。
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[成果の内容・特徴]
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蹄病が多い牛群の泌乳期間中の血中ビオチン濃度は、蹄病が少ない牛群と比べて低い濃度で推移する(図1)。
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血中ビオチン濃度が低い乳牛は、蹄底出血・蹄底潰瘍になる危険性が高い(表1)。
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泌乳初期における血中ビオチン濃度は、BUN(血液尿素窒素)、NEFA(非エステル型脂肪酸)、Ca/P(カルシウムとリンの比率)と関係がある(表2)。
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血中ビオチン濃度はこれらを説明変数とした重回帰式Y=0.2081×BUN-0.0026×NEFA+0.5201×(Ca/P)+4.91473で推定できる(図2)。
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[成果の活用面・留意点]
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乳牛の蹄病予防に関し、研究機関や指導機関での参考資料となる。
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重回帰式は、泌乳初期の牛群の血中ビオチン濃度を代謝プロファイル診断等の結果を用いて概値を把握するために用いる。
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[具体的データ]
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図1 蹄疾患が多い牛群と少ない牛群における乳期別の血中ビオチン濃度

表1 血中ビオチン濃度が低い乳牛における蹄疾患の危険倍率

表2 泌乳初期の血中ビオチン濃度と血液生化学成分値との重回帰分析結果

図2 ビオチンの実測値と予測値(15〜16年度)
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[その他]
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研究課題名:肢蹄疾患の予防のための代謝プロファイル診断法の開発
予算区分 :県単
研究期間 :2002〜2004年度
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