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放牧飼養された和牛の筋肉中機能性成分と遊離アミノ酸含量


[要約]
放牧飼養のみで育てられた和牛の筋肉には、ユビキノン、カルニチン、クレアチンという機能性成分と抗酸化ペプチドであるアンセリン+カルノシンが豊富であるだけではなく、水溶性呈味成分(各種遊離アミノ酸)濃度も高い。

[キーワード]
肉用牛、放牧、ユビキノン、カルニチン、アミノ酸、畜産物

[担当]
九州沖縄農研・畜産飼料作研究部・栄養生理研究室、草地管理利用研究室

[代表連絡先]電話096-242-7747	
[区分]九州沖縄農業・畜産草地(大家畜)、畜産草地	
[分類]科学・参考	

[背景・ねらい]
放牧飼養による牛肉生産に対する消費者の関心は非常に高い。しかし穀物多給の肥育を行わない、放牧飼養のみで育てられた牛からの牛肉における化学成分は明らかにされていない。そこで、放牧牛肉における各種機能性成分{エネルギー産生に関わる補酵素ユビキノン(コエンザイムQ)、脂肪燃焼に関わるカルニチン、運動機能向上に関わるクレアチン、抗酸化性を有するアンセリンとカルノシン}および水溶性呈味成分である遊離アミノ酸の含量を、慣行的肥育法によって生産された牛肉と比較する。

[成果の内容・特徴]
調査対象である放牧牛は育成期から周年放牧飼養され、出荷前5ヵ月間暖地型牧草の草地に25a/頭で放牧されていた30.1ヵ月齢・体重479.0kgの黒毛和種去勢牛4頭である。対照とした慣行牛は畜舎内で濃厚飼料多給の肥育を行った28.0ヵ月齢・体重722.8kgの黒毛和種去勢牛4頭である。

  1. 放牧牛の半棘筋におけるユビキノン含量は3.0mg/100gと、慣行牛の2.5mg/100gよりも高い値を示す(図1)。

  2. 放牧牛と慣行牛の半棘筋におけるカルニチン含量は、それぞれ165、131mg/100g、クレアチン含量は377、314mg/100g、抗酸化ジペプチド(アンセリン+カルノシン)含量は341.8、248.8mg/100gと、いずれも放牧牛が高い値を示し、放牧牛肉は機能性豊かであると考えられる(図2,図3)。

  3. 放牧牛の半棘筋においてタウリン、グルタミン酸、リジン含量は、慣行牛と比較して低い値を示すものの、その他の多くの遊離アミノ酸含量は多い(表1)。放牧牛と慣行牛の甘味を示すアミノ酸(Thr+Ser+Gln+Gly+Ala+Val)は、それぞれ199.7と143.7mg/100gとなり、これを筋肉中水分含量で除した肉エキス中の濃度は292.1と254.6mg/100ml(水分)と、いずれも放牧牛が有意に高い値を示す。放牧牛の筋肉は水溶性呈味成分が豊富であると考えられる。

[成果の活用面・留意点]
  1. 放牧牛肉が機能性成分だけでなく、呈味成分も豊富であることから、放牧飼養を肉牛肥育に組み込むことの可能性が期待される。

  2. 放牧牛肉は脂肪組織に牧草フレーバが残る場合が多く、ある程度の仕上げ肥育は不可欠である。放牧牛の特徴を活かした肥育法を検討する必要がある。

  3. 放牧飼養は慣行的な肥育と比較して多くの条件が異なっている。どの要因が牛肉の化学成分に影響を及ぼしているのかを、今後明らかにしていく必要がある。

[具体的データ]

図1 半棘筋中ユビキノン含有量


図2 半棘筋中カルニチンとクレアチン含有量


図3 半棘筋中の抗酸化ジペプチド(アンセリン+カルノシン)含有量


表1 半棘筋中の水分(%)、タウリン(mg/100g)と遊離アミノ酸含量(mg/100g)

[その他]
研究課題名:脂質代謝や運動機能を促進する機能性成分の量に影響する要因の解明
課題ID:07-07-04-01-07-05
予算区分 :交付金プロ「高品質赤肉」
研究期間 :2004〜2005年度


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