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「上野早生」における糖度11以上の果実生産を図るための水分ストレス


[要約]
根域制限栽培の「上野早生」において、糖度11以上の果実生産を行うためには8月上旬に糖度8.5以上となる必要がある。そのためには、8月上旬の糖度と相関の高い7月下旬の葉の水ポテンシャル値を-0.7MPa以下で3日以上付与し、8月以降も同様な水分ストレスを付与する必要がある。

[担当]
佐賀果樹試・常緑果樹研究担当

[代表連絡先]電話0952-73-2275	
[区分]九州沖縄農業・果樹	
[分類]技術・普及	

[背景・ねらい]
極早生ウンシュウは成熟期間が短く、マルチ栽培等で連年安定して糖度11以上の果実生産を図るためには、夏季に一定の品質向上を行っておくことが重要と考えられる。ここでは、7月上旬にマルチ被覆した根域制限栽培の「上野早生」における7月の葉の水ポテンシャル(ψmax)と8月上旬のBrix値との関連等を把握し、マルチ栽培で夏季からの適正な水管理を行い連年安定した品質向上効果を得るための資とする。

[成果の内容・特徴]
  1. 8月上旬と収穫期の糖度には強い相関があり、収穫期に糖度11以上となるためには、8月上旬に糖度8.5以上となっている必要がある(図1)。

  2. 8月上旬の糖度と7月の葉の水ポテンシャル(ψmax)には負の相関関係があり、特に7月下旬との相関が強い(図2)。

  3. 7月上旬よりマルチ被覆し、7月下旬に-0.7MPa以下の葉の水ポテンシャル(ψmax)を3日以上付与させた樹は、8月上旬に糖度8.5以上となる(図3)。

  4. マルチ被覆以降は土壌水分の減少にやや遅れて葉の水ポテンシャル(ψmax)も低下するが、その推移は土壌母材によって異なり、粘質な玄武岩質土壌では両値の低下がやや遅い特徴がある(データ略)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 本成果は根域制限を伴ったマルチ栽培圃場における試験によるものであり、収穫果の階級割合はM〜S主体である。一般のマルチ栽培園地で本成果を活用する場合には、園地の乾燥条件や土壌母材に応じ、7月下旬までに水ストレスが付与されるようにマルチ被覆時期や被覆時の土壌水分の状態に留意する。

  2. 曇天や降雨の気象条件下では葉の水ポテンシャルも低下しにくくなる。年次による気象条件の変動に対応するためには、梅雨期の6月下旬頃からのマルチ被覆で余剰水を排除しておき、梅雨明け後にスムーズな土壌と樹体の乾燥効果が得られるようにしておくことが望ましい。

  3. 本成果は「上野早生」より早期に収穫できる品種でも適用できるが、水分ストレスは「上野早生」より付与されにくいことが予想されるため、マルチ被覆時期の早期化等の対応を行う。

[具体的データ]

図1 2004、2005年の「上野早生」(玄武岩)における8月上旬と収穫期のBrix値の散布図


図2 2004、2005年の「上野早生」における7月の半旬平均のLWPと8月上旬のBrix値との相関係数


図3 2004、2005年の「上野早生」(玄武岩)における7月下旬の水分ストレス程度と8月上旬のBrix値

[その他]
研究課題名:水分ストレスの簡易現場診断による九州産極早生温州の高糖度化技術の開発
予算区分 :国庫(高度化事業)
研究期間 :2004〜2006年度

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