果実肥大測定によるウンシュウミカンの水分ストレス付与程度の簡易診断
- [要約]
- 「上野早生」のマルチ栽培では、葉の水ポテンシャル(ψmax)の低下に伴い果実肥大も抑制され、特に7月下旬の約10日間における果実日肥大量と葉の水ポテンシャルとの間に関連が強い。果実日肥大量が0.25mm以下となった場合、葉の水ポテンシャルで-0.8MPa以下の水分ストレスが付与されている目安となる。
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- [担当]
- 佐賀果樹試・常緑果樹研究担当
[代表連絡先]電話0952-73-2275
[区分]九州沖縄農業・果樹
[分類]技術・普及
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[背景・ねらい]
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露地栽培の極早生ウンシュウでは、高品質果生産を図るためのマルチ栽培に多く取り組まれているが、年次や園地等により品質向上効果にばらつきが生じており、そのマルチ栽培の効果を判定する技術開発が求められている。ここでは、7月上旬にマルチ被覆した「上野早生」における葉の水ポテンシャル(ψmax)と果実肥大との関連を把握し、現場でマルチ栽培の効果を簡易に診断できる指標の作成を図る。
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[成果の内容・特徴]
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約10日間隔の果実の日肥大量は水分ストレスの付与に関わらず7月から収穫期にかけて緩やかに減少するが、ストレス区は期間平均の葉の水ポテンシャル(ψmax)の低下に合わせて日肥大量も減少する傾向にあり、特に7月下旬と8月中旬に対照区との差が大きい(図1)。
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各時期の日肥大量と期間平均の葉の水ポテンシャル(ψmax)との相関は、7月下旬、8月中旬と9月下旬で強く、7月下旬で最も強い相関となる(図2)。なお、日肥大量と期間最小の葉の水ポテンシャル(ψmax)との相関でも、同様な時期に強い相関関係が認められる(データ略)。
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7月下旬において日肥大量が0.25mm以下の樹は、期間平均の葉の水ポテンシャル(ψmax)が-0.8MPa以下となる。なお、8月中旬は両値の関係にばらつきがやや大きいが、-1.2MPa程度の強い水分ストレスが付与された樹は日肥大量がほぼ0mmとなるなど、両値の対応した関係が見られる(図3)。
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[成果の活用面・留意点]
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本成果は根域制限を伴ったマルチ栽培圃場における試験によるもので、土壌母材が玄武岩質土壌の圃場に植栽した「上野早生」を用いた。
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果実肥大は樹勢や樹体栄養の状態、着果量等に影響を受けるため、本成果の関係を現場のマルチ栽培園地等で活用する場合には適正な管理状況の園地を対象とし、着果量は葉果比で30程度となるように摘果する。
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本成果では日肥大量の算出に当たり樹冠赤道部より1樹20果の果実横径を調査し、7月下旬においては7月20日前後の横径が35mm程度の果実を調査した。
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現場での本成果の活用時には、園地での乾燥条件等が平均的な樹を調査に供試すると園全体の水分ストレス付与程度の傾向把握等が可能であり、樹によるばらつきを考慮して1園地につき3樹程度調査する。
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[具体的データ]
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図1 「上野早生」の水分ストレス付与処理による日肥大量と期間平均のLWPの推移

図2 「上野早生」の各時期の日肥大量とLWPの期間平均値との相関係数

図3 「上野早生」の7月下旬、8月中旬の日肥大量とLWPの期間平均値との散布図
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[その他]
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研究課題名:水分ストレスの簡易現場診断による九州産極早生温州の高糖度化技術の開発
予算区分 :国庫(高度化事業)
研究期間 :2004〜2006年度
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