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台風によるクリ落毬果実の取り扱い


[要約]
台風で落毬したクリは、裂開していない場合は毬剥きに多くの作業時間を要するうえに、着色が進んでいない未熟な果実が多く、品質が劣るため、生果用として出荷可能な果実は非常に少ない。したがって、品質に問題がない裂開して果実が見えている毬を選んで収穫する。

[キーワード]
クリ、台風、落毬、収穫、果実品質

[担当]
熊本農研セ・果樹研・落葉果樹研究室

[代表連絡先]電話0964-32-1723	
[区分]九州沖縄農業・果樹	
[分類]技術・普及	

[背景・ねらい]
近年、増加する大型台風の襲来によって、九州のクリは大きな被害を受けている。台風襲来時が収穫直前〜収穫前半である場合、強風によって落下した毬の裂開程度は様々で、未熟な果実も多い。そこで、台風により落下した毬を裂開程度(図1)によって分け、毬剥きにかかる時間や、果実の着色程度と比重を調査し、毬の開き具合による台風被害果の取り扱い方を明らかにする。
2004年調査では、9月7日に襲来した台風18号で落毬した「筑波」を供試した。なお、収穫開始日は9月8日で、落毬の裂開程度別比率は、裂開毬1に対し、十字毬が2、青毬が2.5程度であった。2005年調査では、9月6日に襲来した台風14号で落毬した「杉光」を供試した。なお、収穫開始日が9月1日、収穫終了日は9月13日で、落毬の裂開程度別比率は、裂開毬1に対し、十字毬が0.5、青毬が1程度であった。

[成果の内容・特徴]
  1. 手剥きによる50毬当たりの毬剥き作業時間は、裂開毬179秒に対して、十字毬では裂開毬の約2.1倍、青毬では約2.8倍である(図2)。

  2. 毬剥き機を使用した場合、裂開毬では一度機械を通しただけですべての毬を剥くことができるが、十字毬では1回目は8%、青毬では36%の毬が剥けずに残るため、作業時間は裂開毬35秒に対して、十字毬はその約1.3倍(45秒)、青毬では約1.7倍(61秒)となる(データ略)。なお、十字毬、青毬の処理では、毬剥き機に負担がかかり過ぎ、作業に支障が出る。

  3. 果実着色程度については、裂開毬ではすべての果実が8分以上着色しているが、十字毬では8分以上着色した果実は18%、青毬では0%である(図3)。

  4. 果実比重は、着色が多い果実ほど重い傾向があり(図4)、裂開毬、十字毬、青毬の果実の順に重い(データ略、2005年産「杉光」)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 落下した毬は、園内に放置しておくと裂開が進むが、シワ果が多くなるため、台風襲来後3日以内には裂開毬を集めて出荷する。

  2. 着色程度が8分未満の果実は、収穫後着色してもシワ果となり、生果用としての出荷には適さないので、加工用としての用途を考える必要がある。

[具体的データ]

図1 落毬の裂開程度(落毬3日目)


図2 「筑後」における台風落毬50毬当たりの手剥ぎ作業時間(調査年:2004年)


図3 「筑後」における台風落毬時の裂開程度と果実着色との関係(調査年:2004年)


図4 「筑後」における台風落毬時の果実の着色程度と比重との関係(調査年:2004年)

[その他]
研究課題名:カンキツ、落葉果樹の生育予測と栄養動態の解明
予算区分 :県単
研究期間 :1962年度〜


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