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年内に成熟し多汁で食味良好なカンキツ新系統「福岡1号」


[要約]
カンキツ「福岡1号」は、12月下旬に糖度11度以上、クエン酸1.0g/100ml以下となり、年内収穫できるカンキツ新系統である。果皮が薄く軟らくて剥皮が容易であるが、浮皮の発生は少ない。果肉は軟らかく多汁で、食味良好である。

[キーワード]
カンキツ、年内収穫、新系統、浮皮、剥皮、多汁

[担当]
福岡農総試・果樹部・果樹栽培チーム

[代表連絡先]電話092-922-4946	
[区分]九州沖縄農業・果樹	
[分類]技術・参考	

[背景・ねらい]
本県のカンキツ生産は、早生温州を中心に産地化がなされているが、気象の影響を受け品質が不安定なことや、価格の暴落が農家経営の悪化をもたらしている。早生温州からの更新品目として「天草」、「はるみ」等中晩生カンキツの導入を図ってきたが、県内主要産地の多くは樹上越冬が困難な気象条件であるため適応できる品種が限られており、早熟のカンキツ優良品種が求められてきた。
そこで、成熟が早く食味が優れた県独自のブランド品種を育成し、県産カンキツの有利販売を図る。

[成果の内容・特徴]
  1. 果肉が軟らかくオレンジの風味を持つ「清見」を母親に、減酸が早く糖度が高い「早香」を父親にして1990年に交雑して得られた実生の中から、1999年に選抜した(図1)。

  2. 樹姿は円、樹勢は中、枝の性質は中である。枝梢に棘を有するが、樹齢の進行とともに減少する。葉は「清見」より小さく、「早香」と同等かやや小さい(図2表1、一部データ略)。

  3. 果形は扁平で果梗部に短いネックを生じる。果皮の粗滑は中、果皮色は黄橙色である。着色は早く、11月下旬には完全着色となる。果皮は薄く、柔らかくて剥皮しやすい。浮皮の発生はみられない。香りは弱いポンカン香がある。種子数は5〜10個で、「早香」より顕著に少ない(図3表1表2

  4. 果肉は軟らかく多汁である。クエン酸含量の減少が早く、12月中旬に1.0g/100ml以下となる。糖度は12月下旬には11度以上になる。収穫時期は12月中下旬である(表1表2)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 品種名「あまぽん」として2004年12月に品種登録出願。

  2. 種子は少ないが入りやすいため、花粉の多い中晩生カンキツとの隣接は避ける。

  3. 秋季の水分変動が大きいと後期裂果することがある。また、隔年結果しやすい傾向がある。

[具体的データ]

図1 カンキツ「福岡1号」の育成の流れ


図2 カンキツ「福岡1号」の樹姿


図3 カンキツ「福岡1号」の果実


表1 カンキツ「福岡1号」の主な特性


表2 カンキツ「福岡1号」の果実品質

注)Tukeyの多重検定により、異符号間は5%水準で有意差有り。

[その他]
研究課題名:カンキツの優良品種・系統の選抜
予算区分 :経常
研究期間 :1990〜2004年度


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