葉の水分吸収率を利用した極早生ウンシュウの樹体水分ストレス判定法
- [要約]
- 極早生ウンシュウにおいて、葉の水分吸収率と水ポテンシャル値には、高い相関関係が認められ、これにより、樹体の水分ストレスの推定が可能となる。
- [キーワード]
- 極早生ウンシュウ、葉の水分吸収率、シートマルチ栽培、水分ストレス
- [担当]
- 熊本農研セ・果樹研・常緑果樹研究室
[代表連絡先]電話0964-32-1723
[区分]九州沖縄農業・果樹
[分類]技術・参考
-
[背景・ねらい]
-
ウンシュウミカンのシートマルチ栽培では、糖度を高めるために土壌を乾燥させて樹体に水分ストレスを付与する必要がある。しかしながら、生産現場で簡易に樹体の水分ストレスを測定する技術がないため、シートマルチ栽培を行っても十分な効果が発揮されているとは言い難い。そこで、葉の水分吸収率と葉の水ポテンシャル値との関係を比較し、水分管理の指標としての水分吸収率の実用性を検討する。
-
[成果の内容・特徴]
-
-
プレッシャーチャンバーによる葉の水ポテンシャル値(以下、LWP)と葉の水分吸収率には高い相関がみられる。各年のLWPと葉の水分吸収率との相関係数は2000年は-0.94、2001年は-0.93、2002年は-0.85であり、3年間を通しても-0.85となる(図1)。
-
LWPと葉の水分吸収率を経時的にみても、両者は非常によく似た動きを示す(図2)。この葉の水分吸収率を測定することで、LWPに近い精度で樹体の水分ストレスの推定が可能である。
-
収穫時の果実品質によって水分ストレス水準を3つのグループに分け、各グループのLWPと葉の水分吸収率の経時的変化をみると、各グループ間には明らかな差が認められる。このうち、糖度11度以上、クエン酸1.1%未満の果実が生産されたグループ[II]を参考として、適正な水分管理モデルの作成が可能であると思われる(図2、表1)。
-
[成果の活用面・留意点]
-
- 葉の水分吸収率の測定法は、以下による。
測定に用いる葉は、晴天日の17〜18時前後に、春枝の中位葉から健全な葉を3枚程度採取し、直ちに各葉の重量を計測する。計測後に葉の主脈と平行にその両側にハサミで2/3程度の切れ目を入れた後、葉全体を水に浸漬し、吸水を促すため30分程度真空ポンプを用いて減圧し、そのまま静置して翌日再び各葉の重量を計測する。
葉の水分吸収率は次式で求める。
葉の水分吸収率=吸水後の葉重÷採取直後の葉重×100)
-
葉の水分吸収率を測定することにより、経験に依らず、樹体の水分ストレスの程度が判定可能となる。ただ、水分ストレスの負荷がLWP値で-0.5MPa程度以下の状態では高い相関がみられるが、それ以上の場合は相関が低くなる。
- 本法による測定の際は以下の点に留意する。
葉に吸水させる際は、葉裏面が濃緑に変色した時点を飽和状態とみなす。吸水後の重量計測時は、水分をよくふき取り、直ちに計測する。
-
この方法は、WSDの測定より簡便であるが精度はほとんど変わらない。
-
[具体的データ]
-

図1 極早生ウンシュウにおける葉の水分吸収率と水ポテンシャルとの相関(2000年〜2002年)

図2 極早生ウンシュウにおける葉の水分吸収率と水ポテンシャルの推移(2001年)

表1 極早生ウンシュウの高品質果実が生産されたグループ II (糖度11度以上、クエン酸1.1%未満)の果実品質、水ポテンシャル及び葉の水分吸収率の推移(2001年)
-
[その他]
-
研究課題名:低樹高・少資材によるニューセラー系温州ミカンの品質保証果実生産技術
予算区分 :助成試験(地域基幹)
研究期間 :1999〜2003年度
目次へ戻る