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夏秋どりイチゴ栽培に適したハウス管理技術と高設栽培槽


[要約]
夏秋どりイチゴ「エラン」の栽培では、ハウスの天井部フィルムを開放してハウス内に遮光資材を展張すると、ハウス内の気温、培地温および葉温が下がり、収量が高い。高設栽培槽に通気性のある資材を用いると、培地温が低くなり、収量が高い。

[キーワード]
夏秋どりイチゴ、エラン、天井部フィルム、遮光資材、気温、培地温、高設栽培

[担当]
福岡農総試・野菜栽培部・野菜栽培チーム、太洋興業株式会社、島根大学

[代表連絡先]電話092-922-4364	
[区分]九州沖縄農業・野菜花き	
[分類]技術・普及	

[背景・ねらい]
消費の多様化が進む中、北海道や長野などの寒高冷地や四国の中山間地では、促成イチゴの端境期になる6〜11月にイチゴを生産する動きが広がっている。福岡県でも、2004年から標高300m以上の地域において夏秋どりイチゴ「エラン」の生産が開始された。一方、夏季の野菜生産を安定させるには昇温抑制が重要であり、本県ではハウス天井部のフィルムを開放して内部に遮光資材を展張するオープンハウスを開発するとともに、本ハウスに適した遮光資材、防虫ネットを選定した(九州沖縄農業研究成果情報第19号)。しかし、夏秋どりイチゴの栽培に適した栽培環境など、不明な点が多い。
そこで、環境条件が「エラン」の着果、果実肥大および収量に及ぼす影響を明らかにし、夏秋どりイチゴの安定生産技術を確立する。

[成果の内容・特徴]
  1. 夏秋どりイチゴ「エラン」では、気温が低いほど開花数、着果数、そう果数は多く、1果重は重くなる。培地温が低いほど着果数は多く、1果重は重くなる(表1表2、一部データ略)。

  2. 夏秋どりイチゴ栽培では、ハウスの天井部フィルムを開放し、ハウス内に遮光資材を展張するとハウス内の気温、培地温および葉温が下がるため、果数が増え、1果重が重くなることで収量が高くなる。(表3図1図2、一部データ略)。

  3. 高設栽培の栽培槽に、通気性を有する資材を用いるとプラスチック製栽培槽を用いた場合に比べて気化潜熱効果で培地温が顕著に低くなり、収量が高くなる(図3図4)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 夏秋どりイチゴ栽培には、夏季に気温が低い九州の山間地域、中山間地域が適する。

  2. 「エラン」は、一代交配種の種子系品種であり、草姿はやや立性で草勢は強い。

  3. アザミウマ類、ホコリダニ等の害虫や灰色かび病には十分に注意し、防除を徹底する。

  4. 夏季の高温を抑制するために、通気性資材の高設栽培槽で栽培する。

  5. 受粉にはミツバチを利用する。

[具体的データ]

図1 夏秋どりイチゴのハウス管理と月別商品果収量(平成16年)


図2 オープンハウスの遮光処理による葉温の推移(16年8月26日、晴天)


図3 オープンハウス内の気温と各栽培槽の培地温(15年8月6日、晴天)


図4 栽培槽と時期別の商品果収量(平成15年)


表1 気温と開花数及び果実の発育(平成15年度)


表2 培地温と開花数及び果実の発育(平成15年度)


表3 ハウス管理と果数、果重、収量(平成15年度)

[その他]
研究課題名:太陽光発電利用による低コスト型施設内複合環境制御システムの開発
予算区分 :高度化事業
研究期間 :2002〜2004年度


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