イチゴ高設栽培における生育、収量に影響のない灌漑水のNa濃度
- [要約]
- 培土量が少ないイチゴの高設栽培においてNa濃度が100mg/Lと高い灌漑水を利用すると、厳寒期にNa過剰による新葉の黄化症状が現れ、3〜5月の収量が低下する。灌漑水のNa濃度が50mg/L以下であれば葉の黄化はみられず収量も低下しない。
- [キーワード]
- イチゴ、高設栽培、灌漑水、Na濃度
- [担当]
- 福岡農総試・筑後分場・野菜チーム
[代表連絡先]電話0944-32-1029
[区分]九州沖縄農業・野菜・花き
[分類]技術・普及
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[背景・ねらい]
- 筑後南部地域の地下水はECが高く、特にNa濃度が100mg/L前後と高いところが多い。水耕栽培における水質基準は、Na濃度で30mg/Lが上限とされているが、培土量が少ないイチゴの高設栽培でNa濃度が高い灌漑水を利用したときの生育、収量に及ぼす影響は明らかでない。
そこで、培土量約2L/株のイチゴの高設栽培において、灌漑水のNa濃度が生育、収量に及ぼす影響について明らかにする。
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[成果の内容・特徴]
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イチゴ高設栽培では、灌漑水のNa濃度が高くなると葉中のNa濃度が上昇する(図1)。
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Na濃度が100mg/Lの灌漑水を利用すると、厳寒期の1月中旬頃より新葉の黄化がみられ、Na濃度0mg/Lの灌漑水と比べて`とよのか'、`あまおう'、`さちのか'の3品種ともに3〜5月の収量が低下する(図3、図5)。
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灌漑水のNa濃度が50mg/L以下では、厳寒期に葉が黄化せず、3〜5月の収量は低下しない(図2、図4、図5)。
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[成果の活用面・留意点]
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地下水のNa濃度が高い地域でのイチゴ高設栽培における灌漑水の指標として活用できる。
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本試験で使用した培養土は、ストロベリーソイルであるが、ベリーサムソイルも同様な結果であり、2種類の培養土による差はみられない。
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[具体的データ]
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図1 灌漑水のNa濃度とイチゴ葉中のNa濃度

図2 灌漑水のNa濃度とイチゴの葉色

図3 灌漑水のNa濃度がイチゴの収量に及ぼす影響(2002年)

図4 灌漑水のNa濃度がイチゴの収量に及ぼす影響(2003年)

図5 高Na濃度の灌漑水利用による葉の黄化
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[その他]
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研究課題名:イチゴ高設栽培における灌漑水の利用改善技術
予算区分 :県単
研究期間 :2002〜2004年度
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