アスパラガス栽培における近紫外線除去フィルム利用によるアザミウマ類の侵入抑制効果と資材特性
- [要約]
- アスパラガス半促成長期どり栽培における近紫外線除去フィルムの利用は、アザミウマ類に対する侵入抑制効果が高く、立茎開始後のアザミウマが急増する時期も遅らせることができる。また、通常の展張期間である2年間はその効果が低下しない。
- [キーワード]
- アスパラガス、近紫外線除去フィルム、アザミウマ類
- [担当]
- 長崎総農林試・作物園芸部・野菜科、環境部・病害虫科
[代表連絡先]電話0957-26-3330
[区分]九州沖縄農業・野菜花き
[分類]技術・普及
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[背景・ねらい]
- アスパラガス半促成長期どり栽培の重要害虫のひとつにアザミウマ類(ネギアザミウマが優占種)がある。現在は化学農薬による防除が中心であるが、登録農薬は少なく、防除対策に苦慮している。また近年は環境保全型農業や減農薬栽培技術への要望が高い。
そこでアザミウマ類の被害防止対策として、近紫外線除去フィルム(以下「UVC」)を用い、その効果と市販製品の紫外線除去特性と持続効果を明らかにする。
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[成果の内容・特徴]
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アスパラガス半促成長期どり栽培において、UVCを被覆することにより、春芽収穫期から立茎初期(5月上中旬)にかけてハウス内における青色粘着シートによるアザミウマ類の捕殺数が減少し、侵入抑制効果が認められる(表1)。
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UVC被覆下では、慣行フィルム被覆下に比べて立茎開始後にネギアザミウマが急増する時期を2〜3週間遅くできる(図1)。
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UVCを通常の展張期間である2年間被覆しても、紫外線除去率は低下しない。またアザミウマ類に対する侵入抑制効果にも変化は認められない(表1、図2)。
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UVCは製品により紫外線除去率に差がある。また農ビ系の製品は280nm付近の紫外線を完全に除去するのに対し、農PO系の製品は若干透過させるが、190〜280nm(UV-C)はオゾン層に吸収され、地表には到達しないので、実用上は問題ない(図3)。
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[成果の活用面・留意点]
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アスパラガスの半促成長期どり栽培地域で適用できる。
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UVCはアザミウマ類のハウス外からの飛来・侵入を防ぐことで効果を発揮する。ハウス内での増殖は抑制しないと考えられるので、慣行フィルムと同様に防除適期を逸しないよう注意する。
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農ビ系の製品は、巻き上げの際にベタつきやすいので、割布を展張する必要がある。
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[具体的データ]
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表1 UVC被覆によるアザミウマ類の侵入抑制効果

図1 UVC被覆下のアスパラガスにおけるネギアザミウマ成虫の密度推移

図2 UVCの分光透過スペクトルの経時変化

図3 UVC製品(新品)の分光透過スペクトル特性
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[その他]
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研究課題名:1.施設野菜の次世代型栽培技術の開発
2.アスパラガス重要病害虫の効率的防除技術確立
予算区分 :県単
研究期間 :課題1(2002〜2006年度)、課題2(2003〜2006年度)
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