夏秋ピーマン産地における養液土耕栽培システムの構築
- [要約]
- 夏秋ピーマンの養液土耕栽培において、排水弁を組み合わせることで傾斜圃場での均一潅水が可能となり、3割減肥でも慣行栽培を上回る収量が確保できる。畑潅施設が整備された圃場で負圧吸引式液肥混入器を使用すると、原水圧の変動によって施肥精度が低下する。
- [キーワード]
- ピーマン、養液土耕
- [担当]
- 大分農林水産研野茶・野菜担当
[代表連絡先]電話0974-22-0671
[区分]九州沖縄農業・野菜花き、生産環境(土壌肥料)
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
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栽培期間の長い夏秋ピーマン栽培では、根の活力の維持と施肥窒素の肥効を維持させることが重要であり、土壌水分の適正管理と効率的な施肥が求められる。そこで、効率的な水・肥培管理が行える養液土耕栽培を夏秋ピーマン栽培に適用し、現地での水利・圃場条件の違いによる問題点等を明らかにすると共に、夏秋ピーマン栽培における養液土耕栽培システムの構築を図る。
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[成果の内容・特徴]
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慣行栽培では、天候の状況に応じて手動潅水を行うため、栽培期間を通して乾湿の差が大きい。また、蒸発散量の少ない時期には、圃場位置の低い方が土壌水分値(pF)が低く推移し、圃場の傾斜によって潅水量が不均一になる(図1)。
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養液土耕栽培では、少量多回数潅水を行うので栽培期間を通して乾湿の差が小さく、pF1.7〜2.3の適水分値で推移する。また、排水弁を組み合わせることで圃場の高低による土壌水分の差が無くなり、傾斜地での均一潅水が可能となる(図1)。
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負圧吸引式液肥混入器を使用した場合、ダム水位の年次や季節による変動や農家間の畑灌使用の時間帯が重なるため、原水圧が大きく変動し、液肥混入器の施肥精度が低下する(図2)。
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葉柄汁中の硝酸態窒素濃度は、養液土耕栽培では栽培期間を通じてほぼ適正範囲(栽培初期1,600〜1,800ppm、栽培中期以降1,000〜1,200ppm)で推移する(図3)。
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収量は、養液土耕栽培では慣行施肥量に対して3割以上の減肥を行っても慣行栽培を4〜19%上回る。また、作物体の窒素吸収量も慣行栽培を上回る(表1)。
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[成果の活用面・留意点]
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原水圧の変動が著しい場合は、定量ポンプ式液肥混入器の使用が望ましい。
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養液土耕栽培の水・肥培管理条件は、「夏秋ピーマンの養液土耕栽培簡易肥培管理マニュアル(大分県)」を参考とする。
- 保温静置培養法(摂氏30度、4週間)による可給態窒素量が10mg/100g(乾土)以下の淡色黒ボク土での結果である。
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[具体的データ]
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図1 傾斜圃場における土壌水分値の推移

図2 潅水施肥月別積算施肥量

図3 葉柄汁中の硝酸態窒素濃度の推移

表1 収量および果実・茎葉の窒素吸収量
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[その他]
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研究課題名:養液栽培などの新生産システムにおける環境負荷低減技術の確立
予算区分 :助成試験(地域基幹)
研究期間 :2000〜2003年度
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