チオファネートメチル剤耐性Fusarium graminearumの初確認
- [要約]
- 大分県内の2004年産コムギにおいて、麦類赤かび病菌の一つであるF. grami-nearumのチオファネートメチル剤耐性菌が3圃場から5菌株分離された。これは本邦における初確認事例である。耐性菌5菌株はいずれもニバレノール産生型菌であった。
- [キーワード]
- 赤かび病、Fusarium graminearum、チオファネートメチル、耐性菌
- [担当]
- 大分農林水産研安全
[代表連絡先]電話0978-37-1141
[区分]九州沖縄農業・病害虫
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
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麦類赤かび病菌が産生するマイコトキシンの一つであるデオキシニバレノール(DON)のコムギでの暫定基準値が、2002年5月に厚生労働省により1.1ppmに設定され、それに併せて農産物検査基準も厳しくなった。そのため生産現場ではこれまで以上に赤かび病の防除に対する意識が高まってきた。麦類赤かび病の防除薬剤として、チオファネートメチル剤が長年に渡り使用されているが、県内では本剤に対する赤かび病菌の感受性については検討されたことがなく、耐性菌の発生実態は明らかでなかった。そこで、チオファネートメチル剤に対する感受性検定を行い、耐性菌の発生状況を把握し、現地指導の基礎資料とする。
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[成果の内容・特徴]
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2004年に34圃場から分離した麦類赤かび病菌565菌株のうち、日田市の1菌株、豊後高田市2圃場の4菌株、計5菌株は、チオファネートメチル剤100ppm含有培地上でも菌糸伸長が認められ、本剤耐性菌であった(図1)。
- チオファネートメチル剤耐性菌の5菌株は、いずれもF. graminearum(種複合体のLineage6:F. asiaticum)であった(図2)。
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耐性菌の5菌株はいずれもニバレノール(NIV)産生型菌であった(図3)。
- 麦類赤かび病の最重要病原菌種であるF. graminearum(種複合体)のチオファネートメチル剤耐性菌は、本事例が本邦における初確認である。
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[成果の活用面・留意点]
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現時点では耐性菌の割合が低く、直ちにチオファネートメチル剤の効力低下を引き起こすことはないと考えられるが、耐性菌密度を抑制するため、他系統薬剤とのローテーション使用を行う。
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チオファネートメチル剤耐性菌の発生状況について、今後の調査結果に注意する。
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[具体的データ]
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図1 2004年分離菌株に対するチオファネートメチル剤の最低生育阻止濃度

図2 Histon遺伝子を用いたPCR-RFLPによる種の同定

図3 マルチプレックスPCR法を用いた毒素産生型の簡易識別
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[その他]
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研究課題名:農作物の病害虫防除技術
予算区分 :国庫委託
研究期間 :2002〜2004年度
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