ミヤコカブリダニを用いたイチゴのハダニ類の防除体系
- [要約]
- 促成栽培イチゴにおいて、ビニル被覆後のハダニ発生前(秋期、11月中旬〜12月上旬)にミヤコカブリダニを放飼し、その後、1月〜3月に1、2回のミヤコカブリダニまたはチリカブリダニを追加放飼をする体系により、化学農薬と同等のハダニ類の防除が可能である。
- [キーワード]
- イチゴ、ミヤコカブリダニ、ハダニ類、防除体系
- [担当]
- 九州沖縄農研・野菜花き研究部・上席研究官、福岡農総試・病害虫部、宮城農園総研・園芸環境部
[代表連絡先]電話0942-43-8341
[区分]九州沖縄農業・病害虫、九州沖縄農業・野菜花き、野菜茶業・野菜生産環境
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
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促成栽培イチゴのハダニ類の防除においては、チリカブリダニをハダニの発生前(秋期、11〜12月)に計画的に放飼し、その後、1月、2〜3月にハダニの発生に応じて放飼する総合防除法が確立されており、その普及が福岡県を初めとして進みつつある。しかし、チリカブリダニはハダニが低密度の時には定着性が悪い。また、絶食条件での生存期間が短いため取扱が難しい等の問題があり、現場での普及率を高めるには、防除の安定性や取扱いの簡易化が望まれていた。そこで、ハダニ以外に花粉等も食べ広食性であり、さらに飢餓耐性を有するミヤコカブリダニを用いたイチゴのハダニ類の防除体系を組み立てる。
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[成果の内容・特徴]
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ミヤコカブリダニは、イチゴのカンザワハダニに対して放飼比率(ハダニの密度に対するカブリダニの放飼数)5:1では約3週間、10:1では4週間、20:1と30:1の場合は約5週間でハダニをほぼ食い尽くす(図1)。抑制能力はチリカブリダニに比べると若干劣る。温度条件が低くなるにつれて抑制に要する期間が長くなるが、平均気温摂氏14.4度(平均最低気温摂氏8.3度)の条件においても高い防除効果を示す(表1)。
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促成栽培イチゴにおいて、ビニル被覆後のハダニ発生前(10月下旬〜12月上旬)にミヤコカブリダニ(2,000頭/10a)を計画的に放飼し、その後、1〜3月にハダニの発生に応じて1,2回追加放飼する体系により、ハダニは栽培終了時まで低密度に抑制される(図2;2回追加放飼した場合のデータは略)。また、1〜3月の追加放飼にチリカブリダニ(2,000頭/10a)を放飼する体系でも高い防除効果が得られる。
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[成果の活用面・留意点]
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本体系における秋期のミヤコカブリダニの効果を高めるためには、育苗期及びの本圃定植後に殺ダニ剤によるハダニ類の防除を徹底し、施設内へのハダニ類の持込を防止する必要がある。また、ビニル被覆後にも殺ダニ剤を散布しておくとミヤコカブリダニの秋期放飼の失敗が少ない。
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ミヤコカブリダニの秋期放飼は、福岡県と宮城県の現地イチゴほ場での試験でも高い防除効果が認められている(データ略)。
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本体系を現地に適用する場合には、地域の栽培条件を考慮し、放飼時期や放飼量を決定する必要があり、農業試験場や普及センター等の指導を受ける。
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ワタアブラムシやミカンキイロアザミウマ等の害虫やうどんこ病等の病害の防除については、ミヤコカブリダニやチリカブリダニに影響のない選択的農薬を利用する。
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[具体的データ]
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図1 イチゴのカンザワハダニに対するミヤコカブリダニとチリカブリダニの密度抑制効果

表1 イチゴのナミハダニに対するミヤコカブリダニの抑制に要する期間

図2 ミヤコカブリダニを利用した促成栽培イチゴのハダニの防除体系
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[その他]
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研究課題名:施設イチゴの天敵類を核にした主要害虫の総合防除技術の開発と体系化
課題ID:07-05-04-02-36-04
予算区分 :生物機能
研究期間 :2004〜2008年度
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