暖地二期作栽培のジャガイモにおけるアザミウマ類の発生状況
- [要約]
- 暖地二期作栽培のジャガイモにおいて、アザミウマ類の発生圃場率は高く、春作では生育中後期や収穫期、秋作では生育初期から中期にかけて密度がピークになるが、発生密度は概ね低い。発生種はネギアザミウマ、ダイズアザミウマを主とする8種である。
- [キーワード]
- ジャガイモ、暖地二期作、発生、アザミウマ類、えそ病
- [担当]
- 長崎総農林試・環境部・病害虫科
[代表連絡先]電話0957-26-3330
[区分]九州沖縄農業・病害虫
[分類]科学・参考
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[背景・ねらい]
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これまで、ジャガイモにおけるアザミウマ類については、通常防除対象になっておらず、発生実態は不明である。一方、トマト黄化えそウイルス(TSWV)によるジャガイモえそ病が、2001年にわが国で初めて長崎県で発生が確認され、2003年には福岡県で認められている。本病は、欧米では古くから発生し被害を及ぼしており、主にアザミウマ類による虫媒伝染をしている。また、TSWVは、近年わが国でもトマトやピーマン、キクなど多くの作物で全国的に発生し問題となっている。そこで、ジャガイモえそ病は、アザミウマ類により媒介される可能性があることから、被害拡大を未然に防ぐための基礎資料として暖地二期作栽培のジャガイモにおけるアザミウマ類の発生状況を明らかにする。
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[成果の内容・特徴]
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暖地二期作栽培のジャガイモにおけるアザミウマ類の発生圃場率は、2003〜2004年の春作で平均約80%と高い(表1)。
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発生消長は、春作では生育中後期や収穫期、秋作では生育初期から中期にかけて密度がピークになる(表1、表2、図1、図2)。
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発生密度は概ね低く、最高で1複葉当たり3.5頭であり、ジャガイモに直接的な被害は与えない。
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発生種は、ミナミキイロアザミウマ、ネギアザミウマ、ヒラズハナアザミウマ、ミカンキイロアザミウマ、ダイズアザミウマ、クロゲハナアザミウマ、キイロハナアザミウマおよびクダアザミウマ類の8種であり、このうち、ミカンキイロアザミウマ、ダイズアザミウマ、クロゲハナアザミウマ、キイロハナアザミウマの4種は、わが国のジャガイモにおける新たな発生確認種である(表1、表2)。
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発生の主体は、春作ではネギアザミウマであるが、秋作では発生密度が低く、主要な種については判然としない(表1、表2、図2)。
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周辺に施設野菜があるジャガイモ圃場の方が,ジャガイモ主産地の圃場よりアザミウマ類の総数や種数がやや多い(表1)。
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[成果の活用面・留意点]
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いずれの種についても暖地二期作栽培のジャガイモにおけるTSWVの媒介能力は未検討であり、今後、明らかにする必要がある。
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わが国の他の作物においては、TSWVはネギアザミウマ、ヒラズハナアザミウマ、ダイズウスイロアザミウマ、ミカンキイロアザミウマによる媒介が確認されている。
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[具体的データ]
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表1 春作栽培ジャガイモに発生するアザミウマ類(成虫)の種類と密度

表2 秋作栽培ジャガイモに発生するアザミウマ類(成虫)の種類と密度

図1 春作栽培におけるアザミウマ類の発生消長

図2 秋作栽培におけるアザミウマ類の発生消長
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[その他]
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課題課題名:農林業生産現場への緊急技術支援プロジェクト
予算区分 :県単
研究期間 :2003〜2004年
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