ミカンキジラミDiaphorina citri成虫の放飼1日内の移動距離
- [要約]
- カンキツグリーニング病のベクターであるミカンキジラミDiaphorina citri成虫は、風向に一致して風下に移動し、1日で350m移動する個体が存在し、平均移動距離は73.4mである。
- [キーワード]
- ミカンキジラミ、Diaphorina citri、カンキツグリーニング病、移動、放飼
- [担当]
- 国際農林水産業研究センター・沖縄支所・総合防除研究室
[代表連絡先]電話0980-83-9111
[区分]九州沖縄農業・病害虫、国際農林水産業・作物虫害
[分類]科学・参考
-
[背景・ねらい]
- カンキツグリーニング病は、東南アジアにおけるカンキツ栽培最大の生産阻害要因である。本病害はミカンキジラミDiaphorina citriによって媒介されるため、本種の移動分散に関する研究は防除戦略を考える上で重要である。現在、本種の分布は屋久島まで確認されており、九州本土への侵入も懸念されている。本研究では、昨年度当センターで開発した標識法を用いて放飼試験を行い、放飼1日後の本種の移動距離および移動に関与する要因について明らかにする。
-
[成果の内容・特徴]
-
-
石垣島の試験圃場内で蛍光顔料粉末を用いて標識した(平成16年度国際農林水産業研究成果情報)ミカンキジラミ成虫2万頭を、放飼前日に標識して定着させていたゲッキツ鉢を静置することで放飼し(図1)、放飼場所から半径50m間隔の同心円上(最大350m)の65箇所に配置した鉢植えゲッキツ(図2)上に定着した標識虫のモニタリング試験を2005年5月と10月に各1回試みる。
-
5月(2005年5月21日)の試験時には放飼日の日平均風速2.2m/s、日平均風向SSWで、放飼1日後にはゲッキツ上で確認された標識虫数は516個体(放飼数の2.58%)である。そのうち79.5%の個体が放飼地点から風下にあたる北側の地点で確認され、最も移動した個体は北側の350m地点、1個体の平均移動距離は79.8mである(図3)。
-
10月(2005年10月15日)の試験時には放飼日の日平均風速5.8m/s、日平均風向NNEで、放飼1日後にはゲッキツ上で確認された標識虫数は118個体(放飼数の0.59%)である。そのうち96.6%の個体が放飼地点から風下にあたる南側の地点で確認され、最も移動した個体は南側の200m地点、1個体の平均移動距離は66.9mである(図4)。
-
以上の結果から、ミカンキジラミ成虫は風向の風下に移動分散し、放飼1日後に最大で350m、平均で73.4m移動する個体が存在する。
-
[成果の活用面・留意点]
-
-
カンキツグリーニング病の総合防除法を構築する際の基礎となる重要な情報となる。
-
放飼1日後以降の移動分散についても調査する必要がある。
-
[具体的データ]
-

図1 大量放飼したミカンキジラミ標識虫

図2 標識虫モニタリング用鉢植えゲッキツ

図3 5月の放飼試験1日後の標識虫の移動

図4 10月の放飼試験1日後の標識虫の移動
-
[その他]
-
研究課題名:ミカンキジラミの移動分散特性の解明
予算区分 :国際プロ〔カンキツHLB防除〕
研究期間 :2002〜2008年度
目次へ戻る