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土壌から抽出したDNAを用いたPCR-RFLP法によるネコブセンチュウの検出


[要約]
黒ボク土壌から市販キットを用いてDNAを抽出しPCR-RFLP法を行うことにより、その土壌中に生息するネコブセンチュウが検出できる。

[キーワード]
黒ボク土壌、DNA、PCR-RFLP法、ネコブセンチュウ、検出
[担当]
九州沖縄農研・地域基盤研究部・線虫制御研究室

[代表連絡先]電話096-242-7734	
[区分]九州沖縄農業・病害虫	
[分類]科学・参考	

[背景・ねらい]
土壌中のネコブセンチュウ検出には、ベルマン法やふるい分け法等によって線虫を土壌から分離し、検鏡・計数する方法を用いるのが一般的であるが、これらには専用の道具及び線虫の形態に関する知識が必要である。そこで、これらを一切必要とせず、簡単な分子生物学的実験設備を用いて土壌中の線虫を検出する方法、すなわち、土壌から直接全DNAを抽出し、これを鋳型にして特異的プライマーでPCRを行い、ネコブセンチュウのみを検出する方法を開発する。

[成果の内容・特徴]
  1. 市販の土壌DNA抽出キット(ISOIL,ニッポンジーン)を用いる。DNA抽出効率を高めるために通常の手順を改良し、処理前に土壌の凍結処理(摂氏-20度または摂氏-80度,1時間)、スキムミルク添加(4%)、Lysis Solution添加混合直後に超音波処理(28KHz,200W,10分間)、インキュベート処理後に再度凍結処理(摂氏-20度または摂氏-80度,1時間以上)を行う(図1)。

  2. このようにして抽出されたDNAを鋳型にして、九州沖縄地域で主要な3種ネコブセンチュウ(サツマイモ、アレナリア、ジャワ)のミトコンドリア遺伝子を増幅させるプライマーでPCRを行ったところ、他生物のDNAに影響されることなくネコブセンチュウのDNAのみが増幅される。上記3種いずれかのネコブセンチュウDNAが存在すれば、1.7kbのPCR産物が確認でき(図2左)、制限酵素Hinf I処理によってこれらに特徴的なバンドパターンが確認され、種の特定が可能となる(図2右)。

  3. 検出感度について検討した結果、ベルマン法による抽出で約100頭/20g土壌レベルの汚染土壌でネコブセンチュウの検出が可能である(図3)。

[成果の活用面・留意点]
  1. ネコブセンチュウに関する知識や調査器材がない場合でも、PCR-RFLP法を行う設備があればネコブセンチュウの検出を行うことができる。また、他の有害線虫の検出にも応用が可能である。

  2. 検出感度については、実用レベルとしてはまだ低く、より改良を重ねる必要がある。

[具体的データ]

図1 土壌DNA抽出の手順


図2 特異的プライマーによるネコブセンチュウの検出


図3 土壌DNAを用いたネコブセンチュウの検出感度

[その他]
研究課題名:DNA解析技術に基づく土壌からの有害線虫検出法の開発
課題ID:07-08-01-*-39-05
予算区分 :交付金
研究期間 :2005年度


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