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蛍光ラベル法によるダクト散布したバチルス・ズブチリス水和剤のイチゴ葉面への付着量の測定法


[要約]
バチルス・ズブチリス水和剤を蛍光色素フルオレセインで着色することにより、ダクト散布によるイチゴ葉面への薬剤付着を直接確認し、付着量を迅速に定量できる。

[キーワード]
イチゴ、ダクト散布、蛍光ラベル

[担当]
九州沖縄農研・野菜花き研究部・野菜花き保護研究チーム

[代表連絡先]電話0942-43-8271	
[区分]九州沖縄農業・病害虫、野菜茶業・野菜生産環境、共通基盤・病害虫	
[分類]科学・参考	

[背景・ねらい]
バチルス・ズブチリス水和剤のダクト散布は水を使わない超省力防除法である。防除に必要な薬剤散布量の算出には、葉面への薬剤の付着量や分布を明らかにする必要があるが、これまでは正確に測定する手段は無かった。そこで、蛍光ラベル法を利用した散布薬剤の定量技術を確立し、薬剤粒子の葉面での分布状況や密度を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
  1. 蛍光色素としてフルオレセインを用いる。「法定色素黄色201号」として化粧品等に使用され比較的安全であり、容易に入手可能である。スキーム1はバチルス・ズブチリス水和剤の着色調製方法である。

  2. 葉面に付着した水和剤の蛍光強度はスキーム2の手順に従い測定する。励起波長493nmで510nmの緑色蛍光を発するため、蛍光分光光度計で分析することにより、特異的かつ極めて鋭敏に測定できる。蛍光ラベルした薬剤を0.1NNaOHで希釈し蛍光強度を測定すると、図1のように10〜1000μg/リットル(0.01〜1ppm)の範囲で直線性を示す。

  3. ビニルハウス内の温風ダクトで散布した後、イチゴ葉面を蛍光顕微鏡のB2励起で観察すると、薬剤粒子は黄緑色の蛍光粒子として観察され、葉緑素による赤色蛍光の背景に対し識別が容易である。また土や粘土の粒子とは明瞭に区別される(図2)。薬剤の付着の直接確認が可能である。

  4. 小葉の水平な部分について測定すると、図3のように上面には散布量の1/3程度が付着するが、下面にはそのさらに1〜10%の付着しか認められない。

  5. イチゴ葉では、表面に付着した粒子に比較して裏面に付着した粒子は小さく、また数も少ない。(図4

[成果の活用面・留意点]
  1. 蛍光ラベルした薬剤は退色を防ぐために褐色ビンなどで遮光保存する。

  2. 未着色の薬剤と蛍光ラベルした薬剤とでは、それぞれをダクト散布したときの寒天平板での捕集コロニー数はほとんど変わらない。

  3. 水和剤として噴霧器で散布した場合も、同様にして付着量を測定することができる。

  4. 寒天平板培地の代わりとして用いたワセリン塗布シャーレは、葉面に比べて吸着力が強く、下向きでは付着量が過大になるため、葉面付着量を測定するには不適である。

[具体的データ]

図1 蛍光ラベル化剤の各濃度での蛍光強度


図2 蛍光ラベル化剤を付着させたイチゴ葉の同一部位の透過光と蛍光での観察結果


図3 ダクト散布による水和剤の葉面付着量とハウス内測定位置


図4 水平なイチゴ小葉の上面・下面への蛍光ラベル化剤の付着状況

[その他]
研究課題名:施設イチゴの生物的手法を核にした地上部病害の総合的防除技術の開発と体系化
課題ID:07-05-04-*-35-05
予算区分 :生物機能
研究期間 :2004〜2008年度


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